JRAアリストテレスに「完全復活」の兆し!? “期待ハズレ”の春から大変身、「いい内容のレース」M.デムーロは京都大賞典(G2)に手応えあり
10日、今年は阪神競馬場で開催された京都大賞典(G2)は、藤岡康太騎手の9番人気マカヒキが勝利。同馬の勝利は2016年のニエル賞(仏G2)以来、5年1ヶ月ぶり。8歳を迎えたダービー馬の復活に、ゴール前では拍手も沸き起こった。
長らく低迷した実力馬の激走にファンが盛り上がった中、惜しくもハナ差の2着に敗れて勝利を逃がしたのは、M.デムーロ騎手とコンビを組んだアリストテレス(牡4、栗東・音無秀孝厩舎)だ。
「外へ出す時に脚を使っていたのと、休み明けもあって甘くなった。それでも折り合いはついていたし、いい内容のレースだったと思う」
誰もが驚かされた8歳馬マカヒキの激走に、あと一歩のところで屈したとはいえ、次走を見据えるデムーロ騎手から出たのは前向きなコメントだった。
アリストテレスは昨夏の2戦で騎乗し、2戦2勝と好相性だった元パートナー。だが、菊花賞(G1)は抽選で除外対象となっていたアリストテレスではなく、自身はマンオブスピリットに騎乗して11着に敗れている。コントレイルの三冠阻止にあと一歩と迫った元相棒の激走を見て、おそらく当時は、あのとき自分が継続して乗っていたならと悔やんだに違いない。
アリストテレスも年明けのAJCC(G2)を快勝し、飛躍を期待されたものの、以降は期待ハズレともいえる不振に陥った。阪神大賞典(G2)では、単勝オッズ1.3倍の断然人気を裏切る7着。2番人気に支持された春の天皇賞(G1)でも4着に敗れ、宝塚記念(G1)では見せ場もないまま9着と低迷した。
そして、一度は手放したパートナーと再びタッグを組むチャンスが巡ってきた今回、デムーロ騎手が燃えない理由はなかっただろう。
「開幕週ということもあり、内を通った馬に有利な馬場状態。デムーロ騎手は『なかなか内に入れてもらえなかった』と振り返っていますが、9番枠だったアリストテレスでうまいポジション取りだったと思います。
先に抜け出したキセキをゴール前で捕らえたところまでは、ほぼ完璧なレース運びだったといえるでしょう。今日の敗戦は素直にマカヒキを褒めるしかありません」(競馬記者)
だからこそ、敗れたとはいえデムーロ騎手が「いい内容だった」と評価したのも分かる話である。
アリストテレスは昨秋の菊花賞(G1)で無敗の三冠馬コントレイルにクビ差の2着に敗れはしたものの、世代最強の王者に冷や汗をかかせた実力の持ち主。秋のG1戦線を前に復活を印象付ける走りを披露したことは、陣営にとっても決して悲観するような敗戦ではないはずだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。