武豊「自分が乗っていたら」……、岩田望来「消極騎乗」に賛否両論!? 南部杯(G1)「中央勢最低人気」ヒロシゲゴールドで激走の亀田温心と明暗

 今月3日の凱旋門賞(G1)に騎乗し、現在は日本で隔離期間中の武豊騎手。今週末の騎乗復帰を前にその心境を語っている。

『日刊大衆』のHPで武豊騎手が連載している「武豊 人生に役立つ勝負師の作法」という不定期コラム。詳細はぜひ10日付の本コラムを一読いただきたいが、武騎手は9~10日に行われる毎日王冠など3つの重賞をテレビ観戦するとした上で次のように記している。

「有力馬に推された人気上位の馬たちが、どんな競馬をするのか!? 一発を狙うジョッキーは、どんな戦法で挑むのか? 視点を変えれば、一つのレースで、何通りもの楽しみ方ができるのが競馬の面白さです。もし、自分が乗っていたら……と、想像力を働かせながら見るのも、こういった状況だからできることです」

 自身は騎乗できない立場ながらも、競馬に対する探究心を隠さない率直な思いをつづっている。

 研究熱心な武豊騎手だけに、11日に盛岡競馬場で行われた南部杯(G1)もテレビで観戦したと思われる。そして主戦を務めるインティ(牡7歳、栗東・野中賢二厩舎)の走りにも注目したに違いない。

 このレースで武豊騎手の代打を務めインティに騎乗したのは若手の有望株・岩田望来騎手だった。慣れない地方の盛岡競馬場、さらに気性的にも乗り難しい馬へのテン乗りとあって、岩田望騎手の心中は期待より不安の方が大きかったはずだ。

 さらにこのコースでは不利とされる内枠。最内の1番枠を引き当てていたこともあり、スタート次第では逃げることも予想された。

 ここ2戦はスタートで出遅れていたインティ。岩田望騎手も頭の中で複数のシナリオを描いていただろう。そんななか、インティは珍しくポンとゲートを飛び出した。

 キックバックを避けるためハナを奪いにいくという選択肢もあったはずだが、岩田望騎手はすぐに手綱を抑えて中団待機の競馬を選択し、先行集団を見る形でレースを進めた。直線を向くと、うまく外に持ち出した岩田望騎手。外から一瞬先行勢を飲み込む勢いにも見えたが、最後は伸びきれず4着に終わった。

 絶好のスタートを決めながら、後方待機策を採るという、やや消極的ともいえる騎乗には、ネットの掲示板やSNSで一部のファンから「あのスタートなら行けばよかった」、「最近は控える競馬で好走しているから仕方ない」など賛否の声が上がった。

「調教師から具体的な指示が出ていたかもしれませんが、せっかく好スタートを切ったのなら逃げても良かったと思います。上位2頭が積極策で好走していただけに、結果的に前に行くのが正解だったかもしれません。

ただ、ここでインティを逃がしてしまうと、過去2戦で武豊騎手が試した末脚を生かす競馬の意味がなくなってしまします。今後を見据えれば、控える競馬でよかったと思いますよ。進路取りも悪くありませんでした」(競馬記者)

 惜しくも馬券圏外の4着に終わった岩田望騎手とインティだが、これとは対照的に積極策で2着に粘り込んだのが1200mを主戦場とするヒロシゲゴールド(牡6歳、栗東・北出成人厩舎)だった。

 奇しくもこちらの鞍上は岩田望騎手と同期の亀田温心騎手。ヒロシゲゴールドは、これまで1400m以上の距離では「0-0-0-6」とサッパリで、JRA勢7頭の中で最も人気薄となる7番人気の伏兵だった。

 インティと同じく好スタートを切ると、道中はワークアンドラブと並走する形でハナに。ペースを落ち着かせると、直線でアルクトスに交わされてからも驚異の粘り腰を発揮。下馬評を覆して大健闘といえる2着を確保した。

 亀田騎手にとってヒロシゲゴールドは自厩舎の馬。普段から調教をつける機会もあり、実戦でも1度騎乗しており、手の内に入れていたことも大きかっただろう。

 同期の若手騎手2人が僅差とはいえ、2着と4着で明暗を分ける形となった今年の南部杯。すでに重賞勝ちのある亀田騎手と、未だ重賞に手が届かない岩田望騎手との勢いの差が出たレースだったのかもしれない。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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