JRA「神騎乗連発」C.ルメールに乗り替わるファインルージュ、秋華賞(G1)打倒ソダシ最有力はやはりこの馬?
東京・新潟・阪神の各場が秋の開幕初週を迎えた。得意の東京競馬場で早速の好騎乗を連発したのが、全国リーディング1位を独走するC.ルメール騎手である。去年11月以来となる2日連続の重賞勝利も達成し、これから本格化していく秋のG1開催を前に改めてその実力を見せつけた。
まず、初日となった9日の土曜東京では、サウジアラビアRC(G3)でコマンドライン(牡2、美浦・国枝栄厩舎)に騎乗。同馬は、新馬戦前よりルメール騎手自身が「ダービーも(騎乗の)予約をしておきます」と語ったほどの期待株だ。
レース序盤は中団に構えていたが、道中でペースがあまりにも遅いとみるや一気にスピードアップ。2番手の好位を確保するクレバーな判断も光った。
直線で逃げ馬を交わし、軒並み33秒台の上がりで迫ってきた後続をしのぎ切ることができたのも、早めにアドバンテージを作ったことが功を奏した結果といえよう。前の馬が残りやすい開幕週の馬場、前半3ハロンが37秒7というスローペースを読み切ったルメール騎手の「巧さ」が際立つ好騎乗だった。
これとは対照的な戦略を取って結果を出したのが日曜の毎日王冠(G2)だ。こちらは前述したサウジアラビアRCとは異なり、前半1000mが58秒5と流れた。スタートで出遅れたダノンキングリーを、リカバリーしながら早めに好位を取りに行った川田将雅騎手に対し、ルメール騎手とシュネルマイスターは後方から動かない。
当然ながら最大のライバルが動いたことには、ルメール騎手も気付いていたはず。
しかし、レース後に「進んで行かなかったので彼をリスペクトしました」と振り返っていたように、パートナーであるシュネルマイスターのリズムを優先。あえて動かないという判断をしたことが、ゴール前での驚異的な末脚へと結びついたのだろう。
結果、直線に入った時点でまだ後方にいたシュネルマイスターだったが、ラスト300m猛烈な追い上げを見せ、ゴール板直前でダノンキングリーを逆転。最後の直線に入っても12番手と、とても届かないような位置にいたシュネルマイスターを見て、諦めかけていた馬券購入者をも驚かせた。
ルメール騎手自身も同週に重賞2勝はかなり嬉しかったらしく、インスタグラムではファンの重賞連勝を祝う投稿をストーリー(視聴は24時間限定のため現在は非公開)にアップするなど珍しい場面も見られた。
そんなルメール騎手は、今週の秋華賞(G1)でファインルージュ(牝3、美浦・岩戸孝樹厩舎)とのコンビが決まっている。桜花賞、オークスの春二冠を含めた近3走は福永祐一騎手が騎乗していたため、コンビ結成は今年1月のフェアリーS(G3)を制して以来だ。
元々はダービーから秋華賞直行を発表していたサトノレイナスに騎乗予定であったが、当馬に骨折が判明し残念ながら出走取りやめとなった。アカイトリノムスメやスルーセブンシーズ、クールキャットなど、過去にルメール騎手の騎乗経験がある馬の陣営は、「願わくば牝馬3冠最終戦の晴れ舞台で再騎乗が叶わないか」とラブコールを送っていたところも多いのではないかと推察される。
さて、人気者ルメール騎手を射止めたファインルージュはどんな馬か。出遅れはデビュー以来ほとんどなし、道中かかることも少なく若い牝馬らしからぬ落ち着きが持ち味だ。
以前の厩舎コメントに「パワーが生かせるような馬場なら」ともあり、高速馬場での切れ味勝負よりはロングスパートなど、持久力勝負に持ち込みたいタイプである。稍重までしか経験はないが、血統や走法的に重馬場になってもより面白いだろう。
短距離を得意とする厩舎ということもありデビューは芝の1200mではあったものの、徐々に距離を延ばして1400m、1600mにも対応。さすがに桜花賞から一気に800mの延長だったオークスでは、初めて11着と大きく崩れたが、前走の紫苑S(G3)では難なく2000mを克服してみせた。
秋華賞は取消さえなければフルゲート出走が想定され、位置取り含めて熾烈な争いとなることは間違いない。難しいレースであればあるほど、馬券を託したくなる人馬はどのコンビか。秋の大一番で再びよりを戻したルメール騎手とファインルージュに期待大だ。
(文=鹿取文)
<著者プロフィール>
平日は会社員、土日はグリーンチャンネル三昧の日々を送る。幼少期にグラスワンダーが勝った宝塚記念を生観戦、絶叫する親族にドン引きするも二十年経ち気づけば自分も同じ道へ。逃げ馬の粘りこみが好き。