伝説の秋華賞(G1)、天皇賞・秋(G1)……元JRA安藤勝己氏がダイワスカーレットを語り尽くす!? 「ユタカちゃんが乗った方が……」
17日(日)、阪神競馬場では秋華賞(G1)が行われ、4番人気のアカイトリノムスメが優勝。2010年に三冠牝馬となったアパパネとの母仔制覇を果たした。
一方、断然1番人気に推されたソダシは直線で伸びを欠き10着。金子真人オーナーによる“紅白対決”は2頭で明暗を分ける形となった。
そんな秋華賞のレース中継を担当したのは“競馬熱”の高さで知られる『関西テレビ』だ。公式YouTubeチャンネル『カンテレ競馬』では、レースの約1時間前からソダシの姿を捉えた密着映像をライブ配信するなど、例年通り、いや例年以上に力が入っていた。
そんな『カンテレ競馬』チャンネルでは、16日(土)に元騎手の安藤勝己氏をゲストに迎え、秋華賞の予想会をライブ配信。その中で安藤氏は秋華賞の見解とともにあの名牝についても熱く語った。
詳細はメンバー限定の本動画(有料)をご視聴いただきたいが、今回は秋華賞当日に公開された20分ほどの無料ダイジェスト版から、安藤氏の発言をほんの少しだけ紹介しよう。
安藤氏にとって唯一の秋華賞勝利は2007年。あの名牝2頭がぶつかり合った伝説のレースだ。2頭とは、その年の桜花賞馬ダイワスカーレットとダービー馬ウオッカである。
ダイジェスト版では、14年前のレース映像を見ながら進行。このレースがG1初実況だったという関西テレビの岡安譲アナウンサーが安藤氏に質問を投げかけながら昔話に花を咲かせた。
「この(秋華賞の)頃はまだ距離に自信がなかった」という安藤氏。ダイワスカーレットがスタート後、2番手でしっかり折り合う姿を見て、当時の記憶を掘り起こしながら語り始めた。
レース序盤、中団を進むウオッカの姿を捉えた場面。岡安アナから「やっぱり気になっていましたか?」と問われ、「もちろん、相手はこれ(ウオッカ)かなとは思っていました」と予想通りの回答。
直線を向いた場面では「手応えは十分だったからね」と当時の感触を思い出し、「差されることはないと思っていました?」という問いにも「そうですね」とキッパリ述べた。
2度目の対決となった桜花賞でウオッカに勝って以降は「ずっと(ダイワスカーレットの方が)上やろうなと思っていました」という安藤氏。その後、話題は自然とあのレースへと移っていった。
あのレースとは、もちろん翌08年に行われた天皇賞・秋(G1)のことだ。今も競馬ファンの間で語り継がれている「伝説のレース」である。
「天皇賞(秋)は酷いレースで負けた」とは安藤氏。ウオッカにハナ差で敗れた激戦を振り返り、「競馬になってない全く」、「あのときが一番酷いです」と仰天発言が続いた。ファンの間では伝説となっているが、安藤氏にとっては「かなり酷いレース」だったようだ。
大阪杯(当時G2)以来、約7か月ぶりの実戦を前に、調教段階から折り合うことすらまともにできなかったというダイワスカーレット。「本馬場に出るときも地下馬道でうなって行っちゃって」、「絶対折り合いつかないだろうな」と確信していたという。
実際に「ゲートを出たらうなってガンガンガンガン行っちゃって……すごいペースでしたよ」、「4コーナーで飛んだ(終わった)なと思った」と負けを覚悟したことを激白した。
もちろんゴール前はご存じの通り、ウオッカが一度前に出たところをダイワスカーレットが驚異の二枚腰で内から差し返し、歴史的なハナ差決着となった。
これには「差し返したように見えるけど、相手(ウオッカ)も同じ脚になって……」と死力を尽くした名牝2頭による“バテ合い”だったことが判明。「伝説の(レース)って言われるけど、僕にしたら一番酷いレースだった」と苦笑いを浮かべた。
また、先行脚質のダイワスカーレットと腕っ節自慢の安藤氏との相性に話が及ぶと、「ユタカちゃん(武豊騎手)くらいが乗った方が(手が)合ったかもしれないなと思っていた。ああいうフワッと乗れるジョッキーの方がね」と今だから言える当時の心境を明かす場面も。
ダイワスカーレットの話題がたっぷり詰め込まれた今回のダイジェスト動画。YouTubeのコメント欄には「こんなおもしろい話が無料で聞けんのはえぐいっす」、「このアンカツさんの話だけで無限に飲める」などファンの心を大いに揺さぶったのは間違いない。
本編ではその後、肝心要の秋華賞の予想に話が移り、安藤氏はソダシを本命に指名。しかし、この日の動画に関してはダイワスカーレットが完全にソダシを食う形となったようだった。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。