JRA福島記念(G3)「令和のツインターボ」パンサラッサ“圧逃”! 4馬身圧勝も「歴史的偉業」には一歩及ばず…これには“師匠”もニッコリ?

 14日、福島競馬場で行われた福島記念(G3)は、5番人気のパンサラッサ(牡4歳、栗東・矢作芳人厩舎)が逃げ切り。前走に続く2連勝で嬉しい重賞初制覇を決めた。

「ハナに行こうと思っていた。ペースが速いのは分かっていたけど、抑えるよりは直線を向くまではしっかりと体力を温存しようと思って」

 鞍上・菱田裕二騎手の腹をくくった作戦が見事にハマった。16頭立て芝2000mで行われたレース。ゲートから飛び出したパンサラッサは迷いなくハナを主張。ディアンドルが内から抵抗し、外からコントラチェックも食い下がろうとしたが、構わずぶっ飛ばした。

 最初の600mの入りが33.6秒というスプリント戦のようなペース。馬群はあっという間に縦長になり、1000m通過は57.3秒。誰もがパンサラッサの暴走だと信じて疑わなかったに違いない。

 しかし、「福島ですし、(後続を)待っても仕方がないので積極的にいきました」と振り返る菱田騎手の腹は座っていた。ペースよりも、相棒の気持ちを優先した騎乗で2番手に食い下がるコントラチェックを振り切ると、7、8馬身という大きなリードを持って最後の直線を迎えた。

「追い出してからの反応も良かったし、これなら追いつかれないだろうと」

 菱田騎手の“放任主義”は、見事にパンサラッサのやる気と噛み合った。292.0mと短い福島の直線で粘りに粘るパンサラッサ。後続が必死に追い上げるも、時すでに遅し。最後は2着ヒュミドールに4馬身差をつける圧勝劇だった。

「菱田騎手の肝が据わった凄い逃げでしたね。大逃げがハマった前走(オクトーバーS・1着)も参考になっていたと思います。元々、気分次第というか成績にムラがあるタイプ。理屈よりも気持ちを優先させてあげることが、この馬には合ってるんでしょうね。見事なレースだったと思います」(競馬記者)

 超ハイペースからの逃げ切りといえば、1998年にJRA特別賞を受賞したサイレンススズカが有名だが、福島の大逃げというキャラではやはりツインターボか。

 1993年の七夕賞(G3)やオールカマー(当時G3)で外連味のない逃げで勝利し、人気を博したツインターボ。今春に大ヒットした競馬アプリ『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)で個性派ウマ娘として登場して一躍人気者になった。

 そんな背景もあってか、レース後にはSNSや掲示板でも「令和のツインターボ!」「これにはツインターボ師匠もニッコリ」と、かつての大逃げ馬を彷彿とさせたファンも多かったようだ。ちなみに「師匠」は、アニメ放送で「ターボ師匠」呼ばれていたことからファンの間にも定着している。

「ツインターボが逃げ切った七夕賞も同じ福島の2000m。あの時も前半1000m通過が57.4秒でしたが、この日のパンサラッサも57.3秒と同じようなペースで逃げています。2着の着差が4馬身差という点も同じですね。

実はグレード制導入以降の福島・芝2000m重賞での4馬身差は最大着差。タイム差だとパンサラッサが0.6秒差で、ツインターボが0.7秒差と“師匠”の方に軍配が上がっていますので『まだまだだな』といったところでしょうか(笑)。パンサラッサはまだ4歳ですし、今後かつてのツインターボのようにファンから愛される馬になるかもしれません」(別の記者)

「素晴らしい馬に乗せてもらえて感謝しています」

 そう話した菱田騎手は昨夏のアイビスサマーダッシュ(G3)以来、約1年3カ月ぶりの重賞勝利で通算4勝目。実は逃げの名手として知られている鞍上・中舘英二騎手はツインターボの七夕賞が重賞2勝目だった。騎手人生を変えた歴史的名牝ヒシアマゾンと出会ったのは、ツインターボと共にオールカマーで重賞連勝を決めた同日だ。

「重賞を勝つのはタイミングもあると思いますが、大きな舞台で乗せてもらえるようにコツコツと頑張っていきます」

 今年ここまで28勝と中堅の壁を突破できないでいる菱田騎手。果たして今後、騎手人生を変えるような名馬との出会いは待っているのだろうか。まずはパンサラッサの“手綱”をしっかりと握っておきたい。

(文=大村克之)

<著者プロフィール>
 稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。

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