JRA【ジャパンC(G1)展望】「無敗の三冠馬」コントレイルは有終の美飾れるか!? 怖い「今年のダービー馬」シャフリヤールは川田将雅と再コンビ!
アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクト―――。三冠馬3頭による夢の競演からはや1年。今年はコントレイルが競馬ファンの注目を一身に浴びるジャパンC(G1)となるだろう。
デビューから圧倒的な強さを誇り、ディープインパクト産駒の最高傑作といわれてきたコントレイル(牡4歳、栗東・矢作芳人厩舎)。昨年は苦しみながらも菊花賞(G1)を制し、史上3頭目の無敗三冠に輝いた。
そして女王アーモンドアイに挑戦状をたたきつけた昨年のジャパンC。菊花賞で3000m戦を走った後の秋3戦目で疲れもあったのだろう。アーモンドアイになすすべなく敗れ、初黒星を喫した。
古馬となった今年はローテーションにも注目が集まった。大阪杯(G1)から始動したのは既定路線だったが、道悪に苦しんで3着に敗れた。天皇賞・春(G1)は距離を理由に見向きもせず、宝塚記念(G1)も疲労が抜けきれず回避。終わってみれば1戦のみで春競馬を終えた。
夏の間に英気を養い、陣営が天皇賞・秋(G1)とジャパンCの2戦で引退することを発表したのは10月上旬。より距離適性の高い天皇賞・秋で確勝を期したが、3歳馬エフフォーリアに完敗し、残すは引退レースのジャパンCだけとなった。
史上最高と呼ばれた昨年に比べるとメンバーがやや軽くなったのは間違いないが、2400mに延びることはコントレイルにとって決してプラスではないだろう。それでも三冠達成後に一度も勝てずに引退という事態だけは避けたいところだ。
前走後は在厩で調整し、陣営のコメントや動きを見ても反動の心配はなさそう。栗東CWでの1週前追い切りは予定を上回る好タイムをマーク。3頭併せで闘争心にも火がついた。「何とかもう1つタイトルを」……。そんな陣営の祈りは通じるか。
三冠馬コントレイルの最大のライバルとなるのが今年のダービー馬シャフリヤール(牡3歳、栗東・藤原英昭厩舎)だろう。両馬の主戦を務める福永祐一騎手はもちろんコントレイルに騎乗するが、ライバル馬の瞬発力を知るだけに否が応でもシャフリヤールを意識することになるはずだ。
シャフリヤールとコンビを組むのは毎日杯(G3)以来2度目の騎乗となる川田将雅騎手。ブリーダーズCフィリー&メアターフ(米G1)でラヴズオンリーユーを勝利に導いた手腕に期待がかかる。
この秋は神戸新聞杯(G2)から始動。単勝1.8倍の1番人気に支持されたが、不良馬場に自慢の切れ味を削がれ、まさかの4着に敗れた。
毎日杯をレコードで、ダービーも速い時計で勝っているように、理想はパンパンの高速馬場だろう。さらにスローペースで瞬発力が問われる展開になれば、勝機は十分出てくるはずだ
前走後はノーザンファームしがらきに放牧に出され、先月19日に帰厩。不良馬場を走ったダメージもあったようだが、1週前には栗東CWで併せて1馬身の先着。前走の疲れは問題なさそうだ。
同期のエフフォーリアが一足先にG1・2勝目を飾った。ハイレベルといわれる現3歳世代のダービー馬として、シャフリヤールも続きたい。
ダービー馬2頭に比べるとG1実績で見劣るが、東京巧者のオーソリティ(牡4歳、美浦・木村哲也厩舎)も侮れない存在だ。
これまでG2以下では「5-1-1-0」も、G1は「0-0-0-3」。G1での最高着順はホープフルS(G1)での5着と大舞台では結果を出せていない。ちなみにコントレイルと唯一対戦したそのホープフルSでは0秒8差をつけられていた。
約2年ぶりの直接対決となる今回はオーソリティにはうってつけの東京2400m。青葉賞(G2)を勝った舞台で、コントレイルとの差はどこまで詰まっているか。
前走は東京2500mのアルゼンチン共和国杯(G2)。57.5kgのトップハンデを背負っての完勝劇で連覇を果たしたが、先行して直線早めに抜け出す横綱相撲は1年前のリプレーを見ているようだった。昨年は叩き2戦目の有馬記念で惨敗を喫したが、得意の東京なら大崩れはしないだろう。
鞍上にC.ルメール騎手を確保できたことも追い風となりそうだ。同馬とは2戦2勝の好相性で、ルメール騎手は過去にジャパンCを3勝している。中2週の反動さえがなければ頂点獲りがあっても驚けない。
牝馬2頭は、実績あるコースで前走大敗からのV字回復を狙う。
まずは今年のオークス馬ユーバーレーベン(牝3歳、美浦・手塚貴久厩舎)。メンバー唯一の3歳牝馬は、左前脚の不安でこの秋は秋華賞(G1)に直行。しかし、スタートから流れに乗れず、追走もままならない状態で、直線は伸びを欠いた。
しかし、ひと叩きされたことで気配は上向き。53kgの軽量を味方にM.デムーロ騎手がオークス(G1)の再現を狙う。
カレンブーケドール(牝5歳、美浦・国枝栄厩舎)は、2年前にオークスとジャパンCで2着に入るなど、G1で3度の2着があるシルバーコレクターだ。前走の天皇賞・秋は12着に敗れたが、休み明けだったことに加え、やはり距離も短かった。
当初の予定通りひと叩きされ、昨年も4着と結果を残しているジャパンCへ。特に昨年は3着デアリングタクトとはハナ差で見せ場を作った。3強に迫った舞台で悲願成就を目指す。
京都大賞典(G2)の上位陣も虎視眈々と一発を狙う。
藤岡康太騎手を背に5年1か月ぶりとなる勝利をつかんだマカヒキ(牡8歳、栗東・友道康夫厩舎)。ゴール前で見せた最後の伸びはダービーを制した3歳時を彷彿とさせた。ジャパンCは17年と19年に4着に好走しており、前走以上の出来なら上位に食い込む可能性はある。
そのマカヒキにゴール寸前で差し切られたのがアリストテレス(牡4歳、栗東・音無秀孝厩舎)だ。鞍上は今年G1で存在感を見せている横山武史騎手が初騎乗。昨年の菊花賞でコントレイルに迫った脚を引き出せるか。
キセキ(牡7歳、栗東・辻野泰之厩舎)は、前走好位3番手からの正攻法で「ハナ+1/2馬身」の小差で3着に好走した。昨年は大逃げを打って大一番に花を添えたが、今年は自らが主役となるか。和田竜二騎手と2度目のコンビで思い切った戦法に期待したい。
過去2年で1頭だけだった外国馬だが、今年は3頭が出走を予定している。
アイルランドのA.オブライエン厩舎が送り込むのはブルームとジャパンの2頭。ブルーム(牡5歳)は、武豊騎手が凱旋門賞(G1)で騎乗したことでも注目されたが、結果は11着。その後はブリーダーズCターフ(米G1)に出走し、9番人気ながら2着に好走している。今回はR.ムーア騎手とのコンビで一発を狙う。
一方、武騎手が騎乗するのはジャパン(牡5歳)。昨年の凱旋門賞でコンビを組む予定だったが出走取消。1年越しのタッグがここで実現した。武騎手はジャパンC5勝目を狙う。
もう1頭はフランスのグランドグローリー(牝5歳、仏・G.ビエトリーニ厩舎)だ。鞍上にはC.デムーロ騎手が配された。外国馬3頭は一雨降って馬場が渋れば浮上する可能性がある。
今年は外国馬を含めて21頭が登録。6年ぶりにフルゲート18頭による戦いとなりそうだ。レース後にはパドックでコントレイルの引退式も予定されている。無敗の三冠馬は有終の美を飾れるのか。それとも伏兵馬の激走はあるのか。ジャパンCは28日15時40分に発走予定だ。