JRAマイルCS(G1)無抵抗のグランアレグリア「お別れ会ムード」にガッカリ!? 安藤勝己氏「おあつらえ向き」マイル王決定戦は“2歳新馬級”のヌルさ……
21日、阪神競馬場で行われたマイルCS(G1)は、1番人気のグランアレグリア(牝5歳、美浦・藤沢和雄厩舎)が昨年に続く連覇を達成。単勝1.7倍という圧倒的な人気に応え、有終の美を飾った。
「ラストランだったので、本当のグランアレグリアを見せたかった。今日は他の馬とは走り方が違いましたね。本当のグランアレグリアでした」
レース後、そう喜びを爆発させた主戦のC.ルメール騎手。貫録の上がり3ハロン32.7秒は当然のごとくメンバー最速、2着シュネルマイスターも32.9秒を叩き出しており、今秋のマイル王を決める一戦は究極の瞬発力勝負となった。コンマ2秒差でG1馬4頭がしのぎを削ったゴール前は、多くのファンを満足させる迫力十分なレースだったに違いない。
しかし、その一方でネット上の一部のファンからは「いくら何でもこれは……」という声も聞こえてきた。
「今年のマイルCSは、1200mで逃げていたサウンドカナロア陣営が控える競馬を公表したことでスローペースが予想されていましたが、それにしても遅いペースでした。ちなみに前半の3ハロン35.6秒は、同じ阪神のマイル戦でこの日行われた2歳新馬戦(4R)と同タイムです。
さすがに勝ち時計には大きな差がありますがG1という究極の舞台、ましてやスピードが求められるはずのマイルG1にしては、あまりにも緩い……いえ、『温い』と言わざるを得ないペースでした。元JRA騎手の安藤勝己さんもTwitterで『お誂えの瞬発力勝負』と呟かれていましたが、まさにグランアレグリアにとって『勝ってください』と言わんばかりのレースだったと思います」(競馬記者)
ちなみにグランアレグリアの前走は2000mの天皇賞・秋(G1)。それも前半1000mが60.5秒という、例年よりも遅いペースだった。
ルメール騎手がレース後に「(位置取りが)ちょっと後ろになったけど、グランアレグリアはスーパーホースですから気にしないで騎乗しました」と話した通り、今回唯一の死角があるとすれば、2000mを経験した影響でマイルの速い流れに「位置取りが想定よりも後ろになってしまう」ことだったはずだ。
実際にグランアレグリアが古馬になってからマイル以下のレースで敗れたのは、いずれも「差し届かず」というもの。上がり3ハロンで最速を記録するも、位置取りが後ろ過ぎて届かなかったという内容だ。
「最初から特別な馬でした。2歳からトップレベルで毎回毎回、すごくいい競馬をしてくれました。ファンもこの馬のことを好きだったと思います。これから……いや、もう既に寂しくなってます」
レース後、そう相棒との別れを惜しんだルメール騎手。グランアレグリアが最後までマイル女王と呼ばれるに相応しい存在だったことは確かだが、まるで“お別れ会”のようなレースになってしまい、簡単に1番人気に勝たれてしまったライバルたちにも思うところがあるはずだ。
瞬発力勝負が多発する日本の競馬が「スローペースからのヨーイ・ドン」と揶揄されて久しいが、今回はさすがに慎重になり過ぎたのかもしれない。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。