JRA遅れて来た超大物を川田将雅が大絶賛! グランアレグリア級32秒8に「もっと高いステージで活躍できる」
21日、阪神競馬場で行われた10R武田尾特別(2勝クラス・芝1800m)は、川田将雅騎手の1番人気プログノーシス(牡3、栗東・中内田充正厩舎)が優勝。クラシック出走が叶わなかった春から逆襲を予感させる豪快な差し切り勝ちを収めた。
「ゲートに関してはまだ好きではないようですね」
レース後、川田騎手がそう振り返った通り、“いつも通り”の出遅れ。この日もここまで3戦して2戦で出遅れを喫していた悪い癖が出てしまった。
ただ、ピンチらしいピンチはスタートだけだったかもしれない。
一時は後方にポツンと置かれるようなシーンもあったが、鞍上の川田騎手は馬群から離され過ぎないようにコントロール。最後の直線で外に持ち出されてからは、まさに圧巻の伸びを披露する。上がり3ハロン32秒8の豪脚を繰り出すと、先行各馬を一気に飲み込んでしまった。
単勝オッズ1.2倍の断然人気を集めた馬の勝利は、出遅れて最後方から大外を回すというロスのある競馬でのもの。ファンを一瞬冷やっとさせたことさえ、もはや“自作自演”のプログノーシス劇場の一部だったといえる。
「そういう面さえ解消してくれれば、今日でもポテンシャルの高いパフォーマンスをしてくれていますし、もっと高いステージで活躍ができる馬だと思います」
まだまだ粗削りな原石を川田騎手がそう評したのも当然だ。
11月も折り返した今の時期に、まだ2勝クラスを勝ったという額面だけで判断を下すことは、おそらくこの馬には当て嵌まらないからである。
3月半ばにデビュー勝ちして2戦目に選ばれたのが重賞の毎日杯(G3)。このレースを1分43秒9レコードで制したのは、後のダービー馬シャフリヤールだった。このときも出遅れて、直線で窮屈になるシーンもありながら勝ち馬から0秒3差の好走を演じている。
能力が確かなら無理に焦る必要はない。陣営はプログノーシスの能力を信じてじっくりと成長を促した。その結果が、6月中京の1勝クラスにおける圧勝へと繋がったのだろう。
3馬身差で突き放した2着馬は後にローズS(G2)を快勝し、秋華賞(G1)で3着に入ったアンドヴァラナウト。そんなプログノーシスだけに、2勝クラスへの出走は他馬からすれば“反則級”にも感じられたに違いない。
「逃げた馬が飛ばす展開で馬群がバラけたのも好都合でしたね。ここまでモノが違うと道中で不利を受けるなどして不完全燃焼になることだけが怖かったですから。
ゴール前でまだ抑える余裕もあったように、本気で走っているようにも思えません。次走がどこになるかは分かりませんが、絶対に覚えておいて損はない好素材でしょう」(競馬記者)
5月の遅生まれだけにまだまだ成長途上。何しろ武田尾特別で繰り出した上がり3ハロンの時計は驚愕の32秒8。これはメインレースのマイルCS(G1)を快勝したグランアレグリアの32秒7とわずか0秒1の差でしかない。同じ阪神の外回りで1ハロン長い距離で計時したのだから価値がある。
川田騎手が挙げた課題を無事にクリアするようなら、一気にトップクラスまで駆け上がれそうなポテンシャルを秘めているのではないか。
遅れて来た超大物候補が来年には勢力図を一変させる可能性すらある。記者が話す通り、今後の動向を絶対に注目しておきたい1頭だ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。