JRA藤岡親子が「ダイヤの原石」と3年前の後悔にリベンジ狙う名馬の登竜門!勝ち馬にはキングカメハメハ、エイシンフラッシュなどダービー馬がズラリ

藤岡佑介騎手

 2018年の皐月賞(G1)は、戸崎圭太騎手が騎乗した7番人気エポカドーロが優勝した年だった。

「悔しいです」

 レース後、開口一番にそう漏らしたのは、2着のサンリヴァルに騎乗していた藤岡佑介騎手だ。

 4コーナーまでは理想的な展開だった。前3頭が後続を離して引っ張るなか、道中は4番手を走る勝ち馬エポカドーロの後ろにつけて息をひそめた。馬場の悪い内側を避けるように最終コーナーを回り、あとは目一杯追うだけだった。

 しかし最後の直線を向いたとき、サンリヴァルはやや内にもたれてしまう。その瞬間、勝ち馬に一気に離されてしまい、最後まで追い抜くことは出来なかった。鞍上の藤岡佑騎手は「離されずに追い比べになれば、結果は違ったかもしれない」と敗北を悔やんだ。

 当時サンリヴァルを管理していたのは、藤岡佑騎手の父・藤岡健一調教師。この日は親子でのコンビで騎手、厩舎ともに悲願の牡馬クラシック制覇がかかっていた。チャンスは次走の日本ダービー(G1)に持ち越されたと思われたが、レースの1週前に藤岡佑騎手がまさかの騎乗停止処分となる。

 ダービーでリベンジは実現しないまま、あっけなく幕を閉じた。それどころかサンリヴァルはレース後に怪我による長期離脱を余儀なくされ、ついには菊花賞(G1)の出走も断たれてしまった。

 あれから3年が経ち、再び親子でのクラシック制覇へ向けて藤岡師が送り出すのが、11日に阪神競馬場で行われるエリカ賞に出走を予定しているヴェールランス(牡2、栗東・藤岡健一厩舎)だ。

 エリカ賞といえば、過去の勝ち馬にタヤスツヨシ、アドマイヤベガ、キングカメハメハ、エイシンフラッシュがいるなど、ダービー馬を多数輩出している伝統の出世レースだ。

 ヴェールランスは父キタサンブラックと母ジュエラーとの間に生まれた超良血馬。両親ともにクラシックを制した名馬同士の配合だけに、血統的な背景からも期待は大きい。また、16年の桜花賞馬ジュエラーは、現役時代に藤岡師が管理していたように、厩舎ゆかりの血統でもある。宝石職人を馬名の由来に持つ母の産駒は、ダイヤの原石といっていいかもしれない。

 前走の新馬戦では、接戦を制し藤岡佑騎手にJRA通算900勝のメモリアルをプレゼントしたヴェールランス。このとき2着のテンダンスは、次走未勝利戦を4馬身差の圧勝。続く東京スポーツ杯2歳S(G2)でも3着と好走しているだけに、これを負かしたことには価値がある。

 レース後「成長はまだ先かと感じていました。嬉しい方に驚いています。前半、少し力んだところはありましたが、手応え良く馬群の中でレースができて、直線はどれだけ伸びるかという感じでした」とコメントした藤岡佑騎手。

 母ジュエラーもそうだったが、新馬戦前の調教では目立つ時計はでていなかったため、陣営としてもデビュー時点では半信半疑の部分があったようだ。まだまだ成長段階での勝利に、これからの期待の高さがうかがえた。

 新馬戦を3馬身半差で完勝したダノンブリザードや前走の未勝利戦でレコードVを決めたサトノヘリオスが人気の中心となりそうだが、ヴェールランスも引けを取らない好素材だ。

 ここを勝って再びクラシック制覇へ挑みたい藤岡親子にとって、未来のダービー馬を多数輩出している出世レースを勝てば夢はつながる。3年前に成し遂げられなかった藤岡家の悲願である牡馬クラシック制覇へ向けて、弾みをつけるためにも重要な一戦となりそうだ。

(文=ハイキック熊田)

<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?

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