JRA朝日杯FS(G1)新鋭馬主の“ビギナーズラック”再び!? 今年G1制覇にあと一歩まで迫った人気薄たちと被る「あの馬」

 19日、阪神競馬場では2歳マイル王を決める朝日杯FS(G1)が行われる。出走15頭中5頭が前走で逃げの手を打っており、ハナ争いにも注目が集まる。

 前走逃げた5頭のうち、オタルエバー(牡2歳、栗東・中竹和也厩舎)は全4レースでハナを切っており、今回も展開のカギを握る。直線の長い新潟1600mで2度、そして東京1400mと阪神1400mで全て3着以内と大崩れしておらず、逃げたときの粘り腰にも期待できそうだ。

 ただし、陣営は「前半しっかり我慢して走ってくれれば」とコメントしており、他に行く馬がいれば、無理に逃げることはしない可能性もあるだろう。

 デビュー以来、オタルエバーの課題とされてきたのが強すぎる前進気勢だ。中竹調教師も「使われつつ前進する真面目な意欲の旺盛さが出て、幼さの多い走りのここ3走」と課題を挙げ、「前進する意欲を和らげるため、障害飛越を取り入れたり、ハミを替えたりと出来ることは何でもやりました」と、G1挑戦に向けて対策してきたことを明かしている。

 その効果もあってか、4戦中3戦で鞍上を務めている幸英明騎手も「操縦性が高まって乗りやすくなった」とコメントするなど手応えを感じている様子だったという。

 15日の最終追い切りでは、その幸騎手を背に栗東坂路で52秒2-11秒9の好タイムをマーク。未対戦の強敵もいるが、上位人気が予想されるセリフォスとは新潟2歳S(G3)で0秒3差の3着と、大きくは負けていない。

 また中竹調教師と幸騎手のコンビは先月のエリザベス女王杯(G1)を制したアカイイトと同じだ。今回も我々をアッと驚かせる大駆けに期待したい。

 そんなオタルエバーを所有するのは住谷幾久子氏。同オーナーにとっては初めて所有する愛馬で、今のところ唯一のJRA登録馬でもある。

 昨年のセレクトセールで、当時1歳のオタルエバーを4510万円(税込み)で落札。いきなり新馬戦に勝利し、4戦で獲得した賞金額はすでに3000万円近くに上っている。もし今回3着以内に入れば、落札額を早くも回収できる見込みだ。

 初めての所有馬がデビュー5戦目でG1挑戦という幸先いいスタートを切った住谷オーナー。“ビギナーズラック”というのはおこがましいが、今年は同じような強運オーナーが目立った1年でもあった。

ファインルージュ 撮影:Ruriko.I

 今年1月のフェアリーS(G3)を制したファインルージュは、桜花賞(G1)3着、秋華賞(G1)でも2着と世代牝馬屈指の実力を見せた。所有する六井元一オーナーにとっては唯一の愛馬でもある。他にも井内康之氏が初めて所有したラブリイユアアイズは、先週の阪神JF(G1)で2着に入っている。

「クラブ馬への出資(いわゆる一口馬主)を含めて、馬主をやっている方は1勝することの難しさを知っていると思います。初めての所有馬がG1に出走するというだけでもすごいことです。

有名なところでは『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)で注目を集めている藤田晋オーナーも、馬主デビューから快進撃を続けている方の1人。ドーブネが出走する今回の朝日杯FSでは、住谷オーナーと同じく初のG1挑戦を迎えます。

ファインルージュもラブリイユアアイズも、もう少しでG1制覇という走りを見せました。今週も住谷オーナーがこの流れを受け継ぐかもしれませんね」(競馬記者)

 奇しくもファインルージュとラブリイユアアイズの初G1は8番人気での好走だった。同じような人気が予想されるオタルエバー。今週も新鋭オーナーの“ビギナーズラック”は炸裂するか。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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