JRA朝日杯FS(G1)「単勝万馬券」濃厚……白毛一族のドレフォン産駒「超伏兵」にソダシ、メイケイエールに続く名馬誕生の予感?

「白毛馬は走らない」……。

 それが競馬界のかつての常識であった。国内で初めて白毛馬と認定を受けたのは1979年生まれのハクタイユーとされているが、同馬は未勝利で競走馬生活を終えると、その後は白毛馬がターフで走ることはほぼなかった。

 転換点となったのは1996年。突然変異で生まれたのが白毛馬のシラユキヒメだった。大種牡馬サンデーサイレンスの産駒として、真っ白な馬体にファンの注目が集まった。

 しかし、競走馬としては9戦して未勝利のまま引退し、夢の続きは産駒に引き継がれた。そしてシラユキヒメは繁殖牝馬として“走る”仔、そして孫を次々と輩出している。これまで同馬を祖とするいわゆる「シラユキヒメ一族」は32頭がJRAのレースに出走しているが、半数以上の18頭が勝ち上がり、合計49勝を挙げている。

 特にここ数年の活躍はめざましい。孫世代のソダシが昨年から今年にかけてG1を2勝、曾孫世代のメイケイエールも重賞を3勝した。他にも先月3連勝でオープン入りを果たしたダノンハーロックや、ハヤヤッコなどがダート路線で頑張っている。

 そんなシラユキヒメ一族の末裔が、19日に阪神競馬場で行われる朝日杯FS(G1)に出走を予定している。

 その馬の名前はシンリミテス(牡2歳、栗東・大根田裕之厩舎)。この一族ならもう少し話題になっても良さそうだが、ファンの関心度はあまり高くない。中には同馬をシラユキヒメ一族と認識していないファンも多いのではないだろうか。

 それもそのはず。シンリミテスの毛色は鹿毛で、血統表を見なければシラユキヒメ一族とは分からない。

 その戦績からも注目度の低さがうかがえる。デビューは夏の小倉芝1200m戦で、13頭立ての10番人気という伏兵だった。ただ、レースでは中団後方からメンバー2位タイの上がり時計をマークし、3着に食い込んでみせた。

 続く2戦目は中京ダート1400mで3番人気の支持を受けた。好スタートから好位の外目を徐々に進出すると、ゴール直前で逃げ馬を競り落とし、見事初勝利を飾った。

 それ以来となる約3か月ぶりの一戦は、強豪が集う2歳マイル王決定戦。芝の適性についてはデビュー戦3着があるため、ある程度見込めるが、距離とコースはともに初めてだ。時計の裏付けもなく、人気になる要素はほぼないといっていいだろう。実際、17日現在の『netkeiba.com』予想オッズでは300倍台のしんがり人気に想定されている。

 その毛色ゆえ、シラユキヒメ一族というイメージが全くわかないシンリミテスだが、祖母は08年の関東オークス(G2)など交流重賞を3勝した白毛のユキチャンである。ユキチャンには今年生まれたヘニーヒューズ産駒を含めて7頭の仔がいるが、うち6頭が白毛で、唯一の鹿毛に生まれたのがシンリミテスの母ポリアフだった。

 ポリアフは現役時代に1勝しているが、その毛色もあってか話題に上ることは少なかった。繁殖入り後はこれまで4頭の仔を出し、全て鹿毛でもはや白毛一族の面影はない。

 そんな背景がシンリミテスに対する注目度の低さにつながっている。それでも初戦の内容から距離延長はプラスに働くだろう。調教の動きも悪くない。

 17日に発表された枠順は大外15番枠に決まったが、10月上旬から開催が続く今の阪神芝ならマイナスにはならない。金曜には阪神で降雨も観測され、土曜には雪の予報も出ている。ダートで勝ち上がったシンリミテスにとって馬場が重くなればなるほど追い風になるだろう。

 父は新種牡馬のドレフォンだ。同レースに出走するジオグリフが注目を浴びているが、同じドレフォン産駒でもシンリミテスに大穴をあける可能性はないだろうか。

 毛色は鹿毛でも、今をときめくシラユキヒメ一族の一員だ。激走の気配を漂わせている。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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