ダビスタは何故『ウマ娘』に完全敗北を喫したのか。エフフォーリアやソダシ、シャフリヤールが「早くも登場」の神アップデートが話題にならないワケ
1200万ダウンロード突破に、年間売上1000億円超え、さらには『日本ゲーム大賞2021 優秀賞』に加え『ネット流行語大賞』も受賞と、2021年最も話題となったゲームは『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)と言っても過言ではない。
当然の話かもしれないが、過去に競馬をテーマにしたゲームで、ここまでの記録的大ヒットを飛ばしたゲームは存在しない。ウマ娘は、従来の競馬ゲームの枠を大きく超えた国民的ゲームに成長したと述べても差し支えないだろう。
そんな中、この12月に“ひっそり”と約8か月ぶりとなる大型アップデートを行った競馬ゲームがある。
ウマ娘の爆発的ヒット以前は競馬ゲームの代名詞を欲しいままにしていた「ダビスタ」こと『ダービースタリオン』(Nintendo Switch版、ゲームアディクト)だ。
約6年ぶりの新シリーズ発売となった昨年12月の発売から、ちょうど1年。今回の【Ver1.1.0】では、ドゥラメンテやキタサンブラック、モーリス、シルバーステートといった2020年、2021年に産駒がデビューした国内種牡馬20頭のデータが新たに追加。
他にもクロノジェネシスやデアリングタクト、さらにはディープインパクト産駒の英オークス馬スノーフォールまで、国内外で今年の競馬界を彩った名馬たちの母がモデルとなる繫殖牝馬も33頭追加。
そして極めつけが先日の有馬記念(G1)を勝ったエフフォーリアを筆頭に、ソダシやシャフリヤール、タイトルホルダーなど今年のクラシックを制覇した3歳馬などが早くもライバルとして登場するなど、まさに大型アップデートと呼ぶに相応しい出来栄えだ。
しかし、そんな“神アップデート”もSNSなどでは、さほど大きな話題には挙がらず……。これまでの「ダビスタ」の注目度や影響力を考えれば寂しい限りだ。
「昨年は競馬ゲームファンにとって待望の新作発売とあって、大きな盛り上がりを見せました。しかし、いざフタを開けてみれば不具合も多く、これまでの作品のクオリティには遠く及ばない出来栄え。何よりローディングが頻発し、さらにはその時間が長いせいで『ダビスタ』の長所でもあった本来のテンポの良さが死んでしまったのが痛かったですね。
もちろん今流行りのダウンロード型ゲームは、アップデートを繰り返しながら修正や進化を遂げていく形が主流ですが、今作の場合、最初の修正アップデートに時間がかかり過ぎたことも痛かったかも……。
結局、最初の修正が行われたのは発売日から21日後でしたが、それまでにSNSやネットの掲示板では『ダビスタ』についての“酷評”が溢れ、一気にファンが冷めてしまった印象です」(競馬誌ライター)
期待が大きかった分、落胆もまた大きかったということだろうか。別のライター曰く、そこにトドメを刺す形となったのが、今春の『ウマ娘 プリティーダービー』の登場で、ダビスタからウマ娘に流れたプレイヤーも少なくないという。
「ウマ娘のようなオンライン型のゲームは、週単位でどんどん新しい要素が追加されますからね。何かあれば、すぐに緊急メンテナンスできますし。そういった意味でユーザーを飽きさせない強みが、パッケージ型のゲームからオンライン型に流れた業界全体の流れでもあります。ウマ娘とダビスタでは、元々の土俵で圧倒的に後者の方が不利なんですよ。
ダビスタの方も一気の大型アップデートよりも、もっと小出しにして頻繁なアップデートを繰り返していた方が、まだユーザーがついてきたかも。そういった意味では、少しもったいない気もしますね」(別のライター)
ただ、前出のライターも含め2人が口をそろえるのは「今のダビスタは十分に楽しめるゲーム」というもの。発売から1年、ファンの期待に応えてきた「従来のダビスタ」がようやく完成したのかもしれない。
だが、やはり「時すでに遅し」と言わざるを得ないのだろうか。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。