JRA「G1・13勝」C.ルメール&川田将雅VS「大躍進」横山武史&菅原明良! 2022年は新鋭が“四天王”の牙城に挑む
28日の開催を終え、2021年のJRA全日程が終了した。
昨年に続いて、世の中は新型コロナウイルスに振り回された不本意な一年だった。一方で、今年の競馬界を振り返ると、『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)の大ヒットによる競馬ファン層の拡大や、クロノジェネシスのグランプリ3連覇、そして11月には日本競馬の悲願である米ブリーダーズC(G1)制覇など嬉しいニュースが数多くあった。
そして、この年末にエフフォーリアで有馬記念、キラーアビリティでホープフルSと連続でG1を制し一年を締めくくった横山武史騎手が、年間を通して競馬界を席巻した。
今年一年の騎手の勢力図を振り返ってみると、横山武騎手を筆頭に若手騎手の台頭が例年以上に目立った年でもあった。
その横山武騎手は、年間勝利数を初の三桁に乗せて、キャリアハイの104勝を挙げた。春にはエフフォーリアで皐月賞を制しG1初勝利を挙げると、その勢いは留まる事を知らず1年でG1・5勝の固め打ち。来年はC.ルメール騎手、川田将雅騎手、松山弘平騎手、福永祐一騎手が2年連続で独占したリーディングトップ4に殴り込みをかける。
さらにもう1人、来年トップ4を狙えそうな位置にいるのが岩田望来騎手だ。
今年はキャリアハイの87勝を挙げ、リーディング7位に食い込んだ。また全騎手の中で最多の騎乗数を誇るタフネスぶりで、来年は更なる勝ち星の上積みと、悲願の重賞制覇を狙う。
そして関東の若手、横山和生騎手と菅原明良騎手の活躍も見逃せない所だ。
横山兄弟では、これまで弟の横山武騎手にスポットライトが当たる事が多かった。しかし、兄の横山和騎手は今年、昨年の30勝から2倍以上となる79勝を挙げ一気に勝ち星を伸ばした。有馬記念では菊花賞馬タイトルホルダーの代打を任されるなど、着実に関係者の信頼を勝ち取りつつある。
もう一人の関東の有望株、3年目の菅原明騎手も横山和騎手同様、昨年の30勝から75勝と大きく勝ち星を伸ばした。
2月にはカラテで東京新聞杯(G3)を勝利し、初の重賞制覇。また7月のアイビスサマーダッシュ(G3)ではバカラクイーンに騎乗。圧倒的不利と言われる新潟芝1000mの1枠1番で、スタートから終始内ラチ沿いを走り続ける型破りな戦法で、単勝130倍ながら3着に入り大波乱を演出した。その大胆さを武器に、来年はトップ10入りと初のG1制覇を狙う。
その他にも、鮫島克駿騎手や坂井瑠星騎手などが順調に勝ち星を伸ばしており、世代交代を予感させる一年となった。
一方で、ベテラン勢に目を向けると、関西の幸英明騎手が81勝を挙げ、28年目にしてキャリアハイを達成。また関東の重鎮・柴田善臣騎手も55歳にして重賞3勝を挙げるなど健在ぶりをアピール。そしてレジェンド武豊騎手も念願の朝日杯FS(G1)を勝利し、G1完全制覇に王手をかけるなど、若手に負けじと気を吐いている。
とはいえ“四天王”のルメール騎手、川田騎手、松山騎手、福永騎手は相変わらずの盤石ぶり。今年のG1全24レース中、半数以上の13勝をこの4人で勝っており、特にルメール騎手、川田騎手は勝率などの数字面でも3位以下を圧倒しているのが現実だ。
外国人騎手の参戦や、度々話題となるシビアな乗り替わりなど、ごく一部のトップジョッキーを除いて、騎手を取り巻く環境は厳しい。
しかし、その中でも着実に頭角を現してきている若手がいるのも事実だ。G1で上位に来る「いつものメンバー」だけでなく、フレッシュな顔ぶれがビックレースでも上位に割って入るようになれば、日本の競馬は更なる盛り上がりを見せるに違いない。
(文=椎名佳祐)
<著者プロフィール>
ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。