JRAシンザン記念(G3)レッドベルアームの不安要素は川田将雅!? 「テン乗り」巧者の名手に待ち受ける「出世レース」のジンクス
2021年の中央競馬も、無事全日程が終了。年間リーディングは5年連続となったC.ルメール騎手が受賞した。勝利数こそ大きく離されたものの、一昨年に続き2位となった川田将雅騎手は、勝率28.5%で最高勝率騎手のタイトルを獲得。昨年も勝負強さを遺憾なく見せてくれた。
テン乗り(初めて乗る馬)での勝利も川田騎手の大きな強みだ。昨年の安田記念(G1)では、単勝1.5倍の断然の1番人気に支持されたグランアレグリアを相手に、初騎乗となったダノンキングリーとのコンビでまさかの大金星を挙げるなど、大舞台でもアッと驚く騎乗を披露した。
過去に遡ってみても、12年のオークス(G1)ではジェンティルドンナの主戦だった岩田康誠騎手が騎乗停止処分を受けた影響で急遽手綱を任されたが、桜花賞(G1)に続く見事な快勝を飾った。その後、秋華賞(G1)も勝って牝馬3冠を達成したジェンティルドンナ陣営からしても、川田騎手が果たした役割の大きさは計り知れないものだったはずだ。
そんな川田騎手だが、9日に中京競馬場で行われるシンザン記念(G3)にレッドベルアーム(牡3、栗東・藤原英昭厩舎)で参戦することが決まった。主戦だった福永祐一騎手は昨年末の香港での落馬負傷により乗り替わりを余儀なくされたため、代役に川田騎手が選ばれた。
レッドベルアームは、前走の東京スポーツ杯2歳S(G2)で先着した相手のアルナシームが朝日杯FS(G1)で4着、新馬戦で負かしたキラーアビリティがホープフルS(G1)を勝利するなど、対戦してきた相手関係をみると「ポテンシャルは高い」といえる。
しかしながら前走の東京スポーツ杯2歳Sで5着となったレース後に、騎乗していた福永騎手は「良い走りが出来ませんでした。まだバランスの取りにくい走りで、コーナーでも逃げ加減でしたし、脚が溜まりにくい走りでした」とコメント。鞍上が多くの課題を指摘していた点は見逃せない。
さらに、あの川田騎手が密かに苦手としている重賞が、このシンザン記念だ。昨年の馬券内率53.8%という記録は、ルメール騎手をも上回る驚異的な数字ではあるが、シンザン記念においては「0-0-0-10」で馬券内率は0%と極端に相性が悪い。
さらに過去の結果を振り返ると、馬券内どころか掲示板に載ったのも1回のみ。2年前の単勝オッズ1倍台のルーツドールでさえも、10頭中7着と惨敗した過去がある。今や世界の「KAWADA」となった名手も、長年に渡りこの負の連鎖反応を断ち切れないでいる。
現在『netkeiba.com』の予想オッズでは、単勝2番人気となっていて、当日も上位人気は必至だろう。この事実があるからには、馬券は他の馬から組み立てるのが妥当かもしれない。
川田騎手が騎乗するだけでその馬の人気が過剰気味になってしまうのは、売れっ子騎手の宿命でもある。テン乗りで回ってきたチャンスを生かし、シンザン記念の呪縛を解き放つことが出来るのか。それともやはり負の連鎖を覆すことは不可能なのか。注目の一戦となりそうだ。
(文=ハイキック熊田)
<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?