M.デムーロ「クラシックいける」も元JRA安藤勝己氏が全否定!? 評価分かれたライラックと不完全燃焼に終わったG1級ヒロイン候補の存在
10日に中山競馬場で行われたフェアリーS(G3)。混戦模様の一戦を制したのはM.デムーロ騎手のライラック(牝3歳、美浦・相沢郁厩舎)だった。
レースはライラックがスタートで出遅れ、後方2番手を追走する。3コーナー過ぎから徐々に進出すると、直線は大外を豪快に伸びて前の馬を一気に差し切った。
デムーロ騎手はレース後、「すごくいい脚だった。ゲートの中でイライラして出遅れたけど、脚をためる競馬をしようと思っていた。3コーナーがすごい手応えで負けないと思った」と、勝つべくして勝ったことを強調。また今後についても「クラシック?いけるんじゃない。これからが楽しみ」と、牝馬クラシックのヒロイン候補に名乗りを上げた。
一方、元JRA騎手の安藤勝己氏の見解は少し違うようだ。
安藤氏は自身のTwitterで「前走は長距離輸送に紅一点と敗因明確。クビ差以上の完勝やった」と、ライラックの勝利に一定の評価を下した。しかし、続けて「ラスールはここ使えば勝ってたでしょ。ここのメンバーとは馬っぷりが違うし」と、前日に中京競馬場で行われたシンザン記念(G3)で、単勝1.8倍に支持されながら7着に敗れていた同じ関東の3歳牝馬を引き合いに出した。
「ラスールは陣営や主戦のC.ルメール騎手が『新しいグランアレグリア』と称するほどの期待馬です。ただシンザン記念では出遅れや道中掛かる場面など、キャリアの浅さを露呈していました。
それでも安藤氏が『馬っぷりが違う。ここ使えば勝ってた』と、はっきりコメントするという事は、フェアリーSには負けないと見ているのでしょう」(競馬誌ライター)
もちろんレースは水物で、単純な比較はできない。だが、それだけ安藤氏がラスールの素質を買っているということなのだろう。
2009年からは共にクラシックへのステップレースとして、同時期に行われてきたシンザン記念とフェアリーS。混合戦と牝馬限定戦、コース等の違いがあるとはいえ、過去の傾向からシンザン記念の方が、その後のクラシックに活躍馬を多く輩出しているのは事実だ。
直近10年で三冠牝馬は3頭登場しているが、うち2頭のジェンティルドンナとアーモンドアイは共にシンザン記念の勝ち馬でもある。さらに16年2着のジュエラーは、3ヶ月後に桜花賞馬に輝いている。
対するフェアリーSは近年の勝ち馬からクラシック優勝馬は輩出されておらず、シンザン記念より格が1つ落ちることは否めないだろう。しかし、近年はスマイルカナやファインルージュなどの活躍馬を輩出しており、クラシックに向けての重要度は高まりつつある。
一方のデムーロ騎手は昨年、ユーバーレーベンでオークス(G1)、サークルオブライフで阪神JF(G1)を制し牝馬路線で復活の道を切り開きつつある。
クラシックを目指す牝馬の背中を良く知る2人。その名手2人の見立てはどちらが現実になるか。今後のクラシック路線の行く末と、ライラックの今後に注目していきたい。
(文=椎名佳祐)
<著者プロフィール>
ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。