JRAのコロナ「感染者非公開」は何故なのか。「騎手に1人でも出れば、中止する方向で…」すでに隔離調教、取材制限の通達済みで“炙り出し”は時間の問題…それでも「具体名」を明かしたくない理由とは

 JRA(日本中央競馬会)は20日、競馬関係者に対して定期的に行っているPCR検査で陽性者が出たことを発表した。なお現在、プライバシー保護の観点などから氏名の公表は行っていない。

 とはいえ、PCR検査で陽性が出た騎手が誰なのかは間もなく明らかになるだろう。仮に調教師であれば表面上はわかりにくいが、騎手の場合は隔離されるためレースそのものに参加できないからだ。

 すでにJRAの公式ホームページでは、今週末の出走馬と騎乗騎手も公開されており、時間を掛ければ素人でも“疑惑の人”を見つけることができる。実際にSNSや掲示板でも具体的な名前が挙がり始めており、具体的な氏名が公開されるのも時間の問題だろう。

「JRAが公表していない以上、公にするつもりはないですが、どうやら関東の騎手複数名にPCR検査で陽性者が出てしまったようです。ただ、美浦(関東馬のトレーニングセンター)ではすでに複数の厩舎から感染報告が挙がっており、周囲の関係者が巻き込まれてしまうのは時間の問題といった状況でした。

先週、知人にPCR検査の陽性者が出たため騎乗を自重していた田辺裕信騎手が今週から復帰できるようになりました(ちなみに田辺騎手と本件は無関係)が、それと入れ替わるように欠員が出てしまうようですね」(競馬記者)

 記者曰く、現在のところ感染が確認された厩舎は10を超えており、JRAから隔離調教、並びに取材制限の通達があったという。その中には関東の大物厩舎の名もあったそうだ。このような背景からも、騎手にPCR検査の陽性者が出てしまうことは避けようがなかったのかもしれない。

 現在、新種のオミクロン株が見つかったことで、爆発的な規模で感染拡大している新型コロナウィルス。東京ではこの日、8638人の感染が確認され、2日連続で過去最多を更新した。これまでの経験を糧に、すでに様々な感染拡大防止の対策が取られているが、それでも防ぎきれていないのが現状だ。

 昨年、一時問題視された「コロナ感染=悪」という風潮はほぼ否定されたと思われるが、それでもJRAが陽性者の氏名を明かさなかったのは何故なのか。プライバシー保護の観点という名目があるとはいえ、一部のファンからは、その姿勢に疑問の声も聞かれ始めている。

「JRAサイドは昨年から、もし『騎手に1人でも感染者が出れば、競馬を中止する方向で今後を検討せざるを得なくなる』と話しており、騎手の感染者が出ることを非常に重大視しています。

ただ、現在は昨年と違ってプロ野球やJリーグといった大規模な興行がオフシーズンということもあって、延期や中止など具体的な発表が行われていない状況。そういった中で競馬が中止になれば、当然他の興行にも影響が出ますし、JRAとしては社会情勢を鑑みながら足並みをそろえて結論を出したいところでしょう。騎手の名をあえて公開しなかった側面には、そういった事情もあると思います」(同)

 記者曰く、今後現状が悪化すれば「当然、開催中止も視野に入ってくるのでは」という。現在、制限して行っている競馬場の観客動員も、再び無観客になる可能性も高そうだ。

「このような状況にあっても、競馬開催を止めることなく継続できたのは、皆様のご理解と温かなご支援があってのことであり、JRAを代表して、改めて御礼申し上げます」

 今年の年初に公式ホームページを通じて、そう挨拶したJRAの後藤正幸理事長の言葉通り、昨年開催が一度も中断しなかったのは、ファンの理解と関係者の徹底したケアがあったからこそだ。

 昨年、プロ野球やJリーグも一時的な開催延期や中止を余儀なくされた一方で、“最後の砦”として年間を通じて滞りなく開催継続を貫いたのが中央競馬だった。ただ、今回の“荒波”を乗り越えることは容易ではなさそうだ。

(文=銀シャリ松岡)

<著者プロフィール>
 天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。

関連記事

競馬最新記事

人気記事ランキング 5:30更新

競馬

総合

重賞レース特集
GJ編集部イチオシ記事
SNS