JRA「僕にとって初」人馬揃って晩成タイプ!? 乗り替わりでG1勝たれた苦労人から意外過ぎるコメント、デビュー「26年目」でようやく手にした殊勲星

 23日、中京競馬場で開催されたダートの中距離重賞・東海S(G2)を制したのは、7番人気の伏兵スワーヴアラミス(牡7、栗東・須貝尚介厩舎)。先に抜け出した1番人気オーヴェルニュをゴール前で強襲し、3つ目の重賞勝ちを飾った。

 東西で重賞が行われたこの日は、中山競馬場のAJCC(G2)を横山典弘騎手とキングオブコージが勝利。近8戦でコンビを組んだ人馬による見事なレースだったが、東海Sのスワーヴアラミス&松田大作騎手のコンビもまた、近9戦(計15戦)で苦楽を共にした名コンビでもあった。

 小雨の降る中で行われたフルゲート16頭立てのダート1800m戦。レースは、2枠3番の内枠を生かして単騎逃げを狙うアイオライトを、1番人気オーヴェルニュと2番人気サンライズホープがどっしりと構える展開となった。

 対するスワーヴアラミスは、松田騎手が出ムチを入れるシーンもありながら、行きっぷりはそれほどでもなく、道中は10番手の後方から追走する形。当初のプランでは好位での競馬もイメージにあったのだろう。

 だが、結果的に行き過ぎなかったことが、最後の直線に向けた末脚を溜める好結果を生んだのだから、上手くいくときとは案外そういうものなのかもしれない。

 雨が降っていたとはいえ、脚抜きのいい重には遠い良馬場のダートが、先行各馬のスタミナを奪っていく。地力で勝るオーヴェルニュとサンライズホープが、早めに抜け出すと最後は我慢比べとなった。

 お互いを意識した人気2頭が叩き合いを演じる中、外からただ1頭、次元の違う脚色で伸びて来たスワーヴヴアラミスに中京の長い直線も味方した。余力の残っていなかったオーヴェルニュは、半馬身遅れて2着。サンライズホープは3着争いでも後れを取って4着と敗れてしまった。

「底力を見せたオーヴェルニュでしたが、ベテランの福永祐一騎手から若手の団野大成騎手に乗り替わったことも大きかったと思います。重賞で勝ち負けの馬に騎乗したこともあってか、勝負を急ぎ過ぎましたね。

サンライズホープもオーヴェルニュが早めに上がって来たため、仕掛けるタイミングがワンテンポ、ツーテンポ早くなったことも響きました。最後の粘りを欠いたのも、これが影響したのでしょう」(競馬記者)

 展開としては恵まれた感もあるスワーヴアラミスだが、過去に2勝したG3とは異なり、7歳にして初のG2勝ちは明るい材料だ。そしてこれは鞍上の松田大作騎手にとっても、待望のタイトルでもある。

 1997年にデビューした同騎手だが、これまで重賞勝ちはG3までしか経験がなかったことは少々意外にも感じられる。

 レース後のコメントで「僕にとっても初めてのG2」と振り返った松田騎手は、セイウンコウセイとのコンビで出走を予定していた2017年の高松宮記念(G1)直前に道路交通法違反を犯し、騎乗停止処分を受けた苦労人だ。

 結果、レースの騎乗が叶わなかったどころか、幸英明騎手へと乗り替わったセイウンコウセイは、見事な勝利をあげた。もし、あの一件がなかったら、G2を飛ばしてG1タイトルを手にしていた可能性もあったはずだ。

 しかし、以降も腐らずに関係者の期待に応えようと努力した先に、歓喜の瞬間が待っていたのだから、これまでの苦労は決して無駄ではなかったに違いない。

 前回重賞勝ちしたエルムS(G3)も、スワーヴアラミスがプレゼントしてくれたように、騎手を続けている限り、再びG1を勝利するチャンスが訪れることもあるだろう。

 辛酸をなめた男のさらなる奮起に期待したい。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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