最後の1頭が「落ちこぼれ説」を一掃する圧勝劇!? 初年度勝ち上がり率は驚愕の100%達成…凄腕馬主は話題のあの人
馬主として所有馬が初出走してわずか半年、初年度所有馬5頭が全頭勝ち上がりという快挙を成し遂げた人物がいる。株式会社サイバーエージェント社長の藤田晋氏だ。
『ウマ娘 プリティーダービー』を運営するCygamesの親会社社長が馬主になったとあって、当初から注目度は高かった。2021年度は、米国のトレーニングセールで購入した2歳馬が4頭、5億円オーバーの落札価格でも話題を呼んだ国内購入の2歳馬1頭の、計5頭がデビューを果たしている。
先陣を切って8月半ばに初出走したデュガは、新馬戦でも未勝利戦でもなく、いきなりOP戦に挑戦。格上クラスにも関わらず3着と好走した。
管理する森秀行調教師のアイデアであったとのことで、藤田氏は「僕はいきなりあんなレースに出られるなんて想像ができなかったし、こんな作戦があるんだと思いましたね」(スポーツ報知インタビュー)とその驚きを語っている。その後も順調な進捗で、11月には早くも全5頭中4頭が勝ち上がった。
だが、最後の1頭は藤田氏が最も頭を悩ませたであろうラヤス(牡3歳、栗東・森秀行厩舎)だった。
ダート戦で1番人気に推されデビューするも、勝ち馬からは4秒以上離される大敗を喫すと、次走はさらに6秒以上の着差でなんとビリに……。2戦して着差が合計10秒以上という負けっぷりは、極めて厳しいキャリアのスタートと言わざるを得なかった。
藤田氏自身からも「我ながら競馬新聞を見ていても全然ラヤスの馬券を買う気にはなれない」「練習ではよく走るらしいんだけど、これまでの2走をみる限りはレースになると途中で他の馬と競争するのを止めてしまう感じだ。なんでだろう。」(Instagramより)というぼやきが出る始末だった。
そんなラヤスだが、3戦目ではじめて芝のレースに出走すると一変。道中は最後方からだったが、直線これまでにない追い上げを見せ、3着に食い込んだ。
しかし、芝で覚醒したかと喜ぶのは早計であったことが次戦で判明する。3番人気に推されたが、またまた着差3秒以上で着順は後ろから3番目と、あっけなく期待を裏切ってしまったのだ。
まるでジェットコースターのような戦績で馬券購入者、そしておそらくはオーナーご本人をも困惑させていたであろうラヤス。再びダートに戻り、先日2日に地方の姫路競馬場で開催されたJRA交流・鉢伏山特別に出走したが、陣営のこのレース選択が吉と出る。
前半は相変わらず後方からの競馬になるも、向こう正面で吉村智洋騎手からムチが飛ぶと、それに応えて早めの捲りを披露。そのまま悠々と押し切り、なんと後続に1.6秒差を付けて勝利するという別馬のような素晴らしい走りを見せた。
勝ち上がり率驚異の100%達成に、藤田氏も興奮を隠せないようだ。5日には自身のInstagramで、馬名と同じ名のワインと共に「いやー、最高すぎる。今週もう何度この動画見返したか分からない」と喜びのコメントをアップしていた。
初年度はこれで全頭勝ち上がりとなったが、真価が問われる2年目はどうか。藤田氏の所有馬で、今年デビューを予定している2歳馬は現時点で12頭。生産者、厩舎、血統全てケチの付けようがないような豪華な名前がズラリと並んでいる。
頭数が増える分難易度も倍増だが、2年連続の勝ち上がり率100%も決して夢物語ではないかもしれない。馬主・藤田晋の更なる躍進が見られるか。デビューの日が待ち遠しくなるばかりである。
(文=大井ふみ)
<著者プロフィール>
競馬にハマって3、4年。周りの女性陣に布教活動を試みるもうまくいかず、おじさんの競馬仲間だけが増えていく。大井競馬場でビール片手にナイター観戦にいそしんでいたが、最近はそれすら叶わず自宅観戦の日々。