JRA 「何とかしたかったんですが……」川田将雅でも破れなかった「血の運命」 きさらぎ賞(G3)ダンテスヴュー惜敗で生まれた珍記録
6日、中京競馬場で行われたきさらぎ賞(G3)は、ゴール前の追い比べを制した2番人気のマテンロウレオが優勝。昨年のホープフルS(G1)6着から巻き返し、クラシック出走へ向けて大きく前進した。
「着差がわずかなだけに何とかしたかったんですが……」
レース後、残念そうに肩を落としたのが、一歩及ばず2着に敗れたダンテスヴュー(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)の川田将雅騎手だ。
2度目の重賞挑戦は中団で折り合いをつけて追走。良い手応えのまま直線へ向くと、持ち味の鋭い差し脚を伸ばす。一時は先頭に立つ場面もあり、勝ち馬との脚色も同じように見えたが、タイミングの差で惜敗した。
ダンテスヴューを応援していたファンはレース後、ネット上の掲示板やSNSで「勝ったと思ったのに……」「惜しすぎる」と、わずかハナ差の敗戦に無念の想いを書き連ねていた。
一方で「血の運命なのか」「何となく2着のような気がしてた」といった意見も見られたのは、同馬の血統的な背景にある。
「惜しかったですね。ダンテスヴューは母クロウキャニオンの産駒ですが、母の産駒は今回のきさらぎ賞で3年連続2着になったんですよね。恐らく、そのことでファンの方々は血統関連の書き込みをしていたと思いますよ」(競馬誌ライター)
確かに、言われてみれば2020年の2着ストーンリッジ、21年の2着ヨーホーレイクも共に母がクロウキャニオン。3年連続で兄弟が同じ重賞に出走しているだけでも驚くべきことだが、何とその3頭全てが2着なのは、偶然だったとはいえ、数奇な運命と言わざるを得ないかもしれない。
また、安定して活躍馬を出すクロウキャニオンは、名繁殖牝馬としても知られている。初年度のキラウエアを皮切りに、ダンテスヴュー含めて13頭の産駒がJRAでデビューし、13頭全てが1勝以上している。
その反面、産駒の特徴として挙げられているのが、「底力や成長力」の乏しさである。
「11年のレパードS(G3)を勝ったボレアス、12年の弥生賞(G2)を勝ったカミノタサハラなど重賞勝ち馬も輩出しましたが、残念ながら産駒がG1を制したことがありません。
また、比較的早い時期から活躍する一方で、古馬になって伸び悩む産駒も多く、『成長力』に疑問符がついています。
兄のヨーホーレイクが、先月の日経新春杯(G2)を制したことは明るい材料だったものの、弟はまたしてもきさらぎ賞のジンクスが続いてしまいました。
力のあるところは見せてくれましたから、兄弟ともに一族最大のジンクスである『G1未勝利』を破ることに期待したいですね」(同)
レース前に友道師が「前回とは違い、今回は動きも良く、体のバランスも良化。確実に成長していますね」と、昨年11月の東京スポーツ杯(G2)4着から成長していることをアピール。1歳上の兄同様、ダンテスヴューにも「成長力」は備わっているようだ。
そして、その結果が今回のハナ差2着なら、今後の成長次第で悲願のG1タイトル獲得も見えてくるかもしれない。賞金面ではギリギリだが、まずはクラシックの舞台に駒を進めて、母にG1タイトルの朗報が届くことを願いたい。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……