JRAクイーンC(G3)に“アーモンドアイ級”怪物登場!評価「乱高下」ハービンジャー産駒の切り札が桜花賞(G1)へ試金石の一戦!?
12日、東京競馬場では3歳牝馬によるクイーンC(G3)が行われる。
11日時点、『netkeiba.com』の予想オッズでは、スターズオンアースとベルクレスタが1番人気を争っている模様。両馬とも重賞で好走しており、人気を集めるのは想定通りだろう。
この2頭に続くのが、単勝オッズ6倍台に想定されているプレサージュリフト(牝3歳、美浦・木村哲也厩舎)だ。
前出の2頭がすでに4戦していることに対し、本馬はこれがキャリア2戦目。同じ1戦1勝馬は他に4頭いるが、プレサージュリフトが最も未知の魅力にあふれた存在といえそうだ。
その理由が、昨年10月の新馬戦で見せたパフォーマンスにある。
「2番人気に推されたデビュー戦は最後入れの大外枠だったのですが、スタートで出遅れてしまいました。大野拓弥騎手は無理をせず、後方待機。3~4コーナーで外目から馬なりで進出し、直線を向いたときは手応え十分でした。
結果的に逃げた馬が2着に粘る前有利な流れのなか、1頭だけ違う脚色で快勝しました。圧巻のレースぶりを見て、『アーモンドアイの再来だ』と高く評価する記者もいたとか。上がり3ハロン(33秒3)はもちろん最速で、同2位の馬より何と1秒4も速い時計でしたから」(競馬記者)
初戦の競馬を見る限り、2戦目であっさり重賞を勝っても不思議はないだろう。すでに東京芝1600mを経験している強みもある。また、1歳上の半姉オールアットワンス(父マクフィ)が、昨年のアイビスSD(G3)を勝っているように母系がスピード血統なのも心強い。
一方、懸念があるとすれば、父がハービンジャーという点か。
11年に鳴り物入りで日本に輸入され、社台スタリオンステーションで種牡馬入りしたハービンジャー。初年度から400万円というやや強気な種付け料だったにもかかわらず200頭以上に種付けされる人気を誇った。
しかし、初年度産駒で重賞を勝ったのはベルーフ(15年京成杯)だけで、2年目産駒からドレッドノータスとプロフェットなどが重賞を勝ったが、なかなか期待された大物は誕生せず。来日7年目の17年度の種付け料は250万円まで下がっていた。
種牡馬ハービンジャーの潮目が変わったのは17年秋。この年は3年目産駒だった3歳馬が大活躍を見せた。10月から11月にかけて、ディアドラ(秋華賞)、モズカッチャン(エリザベス女王杯)、ペルシアンナイト(マイルCS)が立て続けにG1を3勝したのだ。
これで種牡馬ハービンジャーの株は一気に上昇。18年度の種付け料は過去最高の600万円までV字回復を果たした。
さらに4年目産駒からは、ブラストワンピースとノームコアという2頭のG1馬が登場。ハービンジャー時代の到来かと思われたが、再びスランプが訪れる。
5年目産駒からはニシノデイジーとフィリアプーラがクラシックに出走したが、G1では結果を残せず。続く6~7年目産駒は現時点で1頭も重賞勝ち馬がいない。
そして迎えた8年目産駒がプレサージュリフトのいる現3歳世代である。ハービンジャー旋風が吹き荒れた17年秋の翌18年に種付けされた期待の世代で、実際に若駒S(L)を勝ったリューベック、新潟2歳S(G3)2着のアライバル、京成杯(G3)2着のロジハービンなどがクラシックに名乗りを上げている。
プレサージュリフトは、再び上昇気流に乗ろうとしているハービンジャー8年目産駒の「切り札」と呼べる存在だ。デビュー戦で見せたハービンジャー産駒らしからぬ“アーモンドアイ級”の末脚を再び炸裂させ、桜花賞(G1)戦線へ名乗りを上げられるか。ここが試金石の一戦となる。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。