JRA豊が演出した「遅咲き」のサイレンススズカ! 中山記念(G2)のラップは本家以上、コントレイル世代の「ニュースター候補」に3つの共通点
27日、中山競馬場で行われた伝統の中距離重賞・中山記念(G2)は、吉田豊騎手の2番人気パンサラッサ(牡5、栗東・矢作芳人厩舎)が優勝した。
前走の有馬記念(G1)では13着に敗れたものの、“自分の庭” である中距離に戻った今回は水を得た魚のように一変。自らハイペースに持ち込んだ一戦で鮮やかな逃げ切り勝ちを決めてみせた。
G1馬同士の激突に意気消沈し、5戦連続二けた惨敗の大スランプ
中山記念といえば、1998年にあのサイレンススズカが優勝したレース。パンサラッサの後続を寄せ付けないハイペースの逃げに往年の快速馬の姿を重ねたファンもいたのではないだろうか。
宝塚記念(G1)を制し、同年秋の毎日王冠(G2)でエルコンドルパサー、グラスワンダーといった最強馬クラスを返り討ちにしたサイレンススズカと比較するには、少々気が早いかもしれない。
だが、タイミング的にそうとも言い切れない可能性が残されている。
奇しくも同じレースを勝った2頭だが、既に福島記念(G3)勝ちのあるパンサラッサに対し、当時のサイレンススズカは重賞未勝利。このときはまだ自分のスタイルを確立できていなかった。
同馬のその後の活躍を知っているだけに、多少強引なことは認めざるを得ないが、サイレンススズカの評価を決定的に押し上げたきっかけが、後の金鯱賞(G2)の大差勝ちだったことを思えば、少なくともこの時点での両者にイメージほどの差はなかっただろう。
■パンサラッサはサイレンススズカの再来?
そこで、特に印象に残った3つの共通点について触れてみたい。
まず一つ目に挙げたいのは、いずれも東京の中距離オープンの勝利をきっかけに大逃げという絶対的スタイルを確立したことだ。
サイレンススズカは3歳秋の天皇賞で大逃げを見せていたものの、勝利を手にしたのはバレンタインS(当時は芝1800m)。パンサラッサもまた、初めて大逃げを打った昨年11月のオクトーバーS(L)で勝利しているように、東京の中距離戦から大きな変貌を遂げている。
2つ目は、いずれも3歳クラシックではこれといった活躍が出来ずに、古馬になってから本格化したところである。サイレンススズカは日本ダービー(G1)に出走して9着、パンサラッサは出走すら叶わなかった。
最後の3つ目は、両馬の覚醒に“東西の豊”が関わっている点である。サイレンススズカは競馬界のレジェンド武豊騎手、パンサラッサは東の豊こと吉田豊騎手との出会いが、運命の分岐点となった。偶然とはいえ、どちらも豊という名前の騎手が快進撃をもたらしたことになる。
また、パンサラッサが中山記念で刻んだラップも優秀なのだ。具体的なラップ構成は後述するが、勝ち時計や1000m通過のラップ、上がり3ハロンのタイムで稀代の快速馬を彷彿とさせるのに十分なパフォーマンスだったといえる。
■中山記念の勝ち時計はサイレンススズカ超え
1998年 サイレンススズカ
2着ローゼンカバリー(1馬身3/4)
1.48.6(良)上がり38.9、1000m通過58.0
13.1-11.8-11.3-10.8-11.0-11.7-12.8-12.9-13.2
2022年 パンサラッサ
2着カラテ(2馬身1/2)
1.46.4(良)上がり37.3、1000m通過57.6
12.7-11.2-11.3-11.1-11.3-11.5-11.6-12.2-13.5
勿論、馬場状態や相手関係もあるため、数字だけで単純比較するのは危険だが、2着につけた着差も上回ったなら、それなりに評価してよさそうだ。
今回の圧勝劇に手応えを感じた陣営は、春の目標にドバイまたは大阪杯(G1)を視野に入れていくと表明。管理する矢作調教師は、同世代の三冠馬コントレイルを育てたが、僚馬であるパンサラッサも次代のニューヒーロー候補として、厩舎を支える存在となるかもしれない。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。