JRA蛯名正義「大きく変わった実感はないんだよね」厩舎開業も中身は藤沢和雄厩舎!「エビショーカラー」は師匠とバックボーンの決定的な違いにあり?
2月から3月へと替わり、競馬界に新しい騎手、調教師が誕生した。現役時代にJRA史上4位の2541勝を挙げた蛯名正義・元騎手もまた、新たに厩舎を開業した一人だ。
この1年間、藤沢和雄元調教師のもとで研修していた蛯名師。今月になって、晴れて技術調教師から調教師となった。
現時点での蛯名厩舎のスタッフは全部で10名いるという。そのうち9名は先月まで藤沢和厩舎のスタッフだったため、実質「藤沢和雄厩舎」と例えても差し支えはないかもしれない。
また、厩舎の拠点も管理馬もほとんど変わらない。蛯名厩舎の仮住まいが何と藤沢和厩舎の向かいにある出張馬房で、管理馬も藤沢和厩舎から引き継いだ馬ばかり。これには蛯名師も『東京スポーツ』で連載中のコラム「エビショウの“独舌”講座」にて「今までと何が変わったか……となると、今のところ大きく変わった実感はないんだよね(笑)」と、まだ調教師の実感が湧いていないようだ。
実際、蛯名師も新たに2歳馬が入るまでは藤沢和師が受け継いだことをベースに厩舎運営をしていく予定のようだ。
しかし、蛯名師は藤沢和師と異なり、騎手出身の調教師である。厩舎運営を進めていくうちに、どこかしら方向性の違いが出てくるかもしれない。特に顕著な違いが出てきそうなのは、騎手の起用方法ではないだろうか。
■藤沢和雄師との差別化点とは
藤沢和師といえば、外国人騎手を重用するイメージを持っているファンも少なくないはずだ。C.ルメール騎手が正式にJRA所属騎手となった2015年以降は、有力馬の主戦を任せていた。また、それ以前はO.ペリエ騎手など外国人騎手が来日していれば、その騎手を優先することもあった。
対する蛯名師は長らく関東のトップジョッキーという看板を背負っていたため、ルメール騎手をはじめとする外国人騎手は、騎乗馬確保の強力なライバルであり、同業者としては“商売敵”の関係だった。近年の外国人騎手優先の流れには、日本人騎手の一人として思うところもあったに違いない。
こういった事情を考えると、自身を慕っていた後輩騎手などを主戦騎手に据える可能性もある。また、2010年のオークス(G1)のレース後に抱擁して喜びを分かち合った横山典弘騎手や、仲の良い同期の武豊騎手を起用することも考えられる。
「確かに蛯名師に替わって、ルメール騎手などの外国人騎手の起用は減るかもしれませんよね。美浦にはディーマジェスティの主戦を譲った松岡正海騎手をはじめ、競馬番組にも出演した『エビ会』のメンバーの田辺裕信騎手など蛯名師と仲の良い騎手がたくさんいますから、つい起用しちゃうなんてことも……。
現時点で騎手を選べる立場ではないからオーナーサイドの意向を聞いて考えるとしています。ノーザンファーム系一口クラブの馬も結構いる状況ですから、やはり開業当初はルメール騎手など藤沢和師と似た騎手起用法になるでしょう。
ただ開業して数年、自分で営業して集めた馬が増えてきたら、エビショー流のジョッキーの起用もありそうですね。オーナーサイドもそれを分かった上で預けるでしょうし。どんな厩舎に変貌するか楽しみです」(競馬誌ライター)
藤沢和師から最後に「頼むな」と声をかけられたという蛯名師。果たして名門・藤沢和雄厩舎から新鋭・蛯名正義厩舎に変化していくことができるだろうか。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……