JRA横山一家で「同士討ち」がマテンロウレオ惨敗の決定打!? 強行ローテで凡走も陣営の「単純明快」理由に悲観なし
6日、中山競馬場で行われた弥生賞ディープインパクト記念(G2)を制したのは、田辺裕信騎手の3番人気アクスビクターモアだった。
皐月賞(G1)と同舞台のトライアルで倒したのは、昨年の朝日杯FS(G1)を制した武豊騎手とドウデュースのコンビ。2走前のアイビーS(L)で敗れていた相手が、今回はG1馬として立ちはだかったものの、大本命の追撃をクビ差凌いで重賞初勝利を手に入れた。
「掛かる面があるのですが、遅い流れの中で後ろにいるのが嫌だったのでポジションを取りに行きました」
会心の勝利をそう振り返った田辺騎手だったが、レース前に「仮に引っ掛かってもあとで考えればいいし、思い切っていきなさい」と指示した田村師の後押しも大きな援護射撃となったに違いない。
これに対し、全幅の信頼関係で知られる横山典弘騎手と昆貢調教師のコンビが送り出したマテンロウレオ(牡3、栗東・昆貢厩舎)は、これといった見せ場もなく10着に惨敗。前走のきさらぎ賞(G3)で見せた勢いも鳴りを潜めてしまった。
同馬は既に賞金も足りており、皐月賞出走も安泰。それでも中3週と間隔が詰まる弥生賞への参戦には、SNSや掲示板では「楽しみ」という好意的な意見もあれば、「本番に響かなきゃいいけど」「出る意味あるの?」といった懐疑的なものもあった。
■マテンロウレオの敗因に意外な理由
しかし、11頭中の10着という結果を考えると、どちらかといえば「強行軍」とも感じられるレースに「恥ずかしい競馬はしない」と意気込んでいた陣営の意欲も空回りしてしまったようにも映る。
中山の芝2000mで争われたレース。無難にスタートを決めたマテンロウレオは、道中でドウデュースを外に見る中団内目のポジションから競馬。1000m通過が61秒1のやや遅めの流れも、人馬の折り合いは問題なさそうだった。
だが、3~4コーナーに掛けて徐々に各騎手が慌ただしく動き始める中、鞍上の横山典騎手の手綱は一向に動かないまま、一時は最後方までポジションを下げる。最内からコーナーワークで2、3頭を交わしたものの、直線に入ってもこれといって激しいアクションは見られず、ゴール前で軽く促した程度だった。
「途中からは回って来るだけの競馬にも見えました。トライアルレースだったこともあり、先々のことを考えて、横山典騎手もダメージの残らない騎乗に徹した気がします。ただ、皐月賞に向けてという意味では、特に収穫のなかった一戦といえそうです」(競馬記者)
その一方で、昆調教師がレース後に残したコメントに、不可解な敗戦のヒントとなりそうな言葉があった。
「今日は参考外。スローペースで、進んでいかない2頭の後ろにはまってしまった。全然、競馬をしていない」
師の説明によると、馬の状態よりもレース展開が合わなかったことが一番の敗因と分析しているようだ。確かにレース映像を見直してみると、インに潜り込んだマテンロウレオの前にいるメイショウゲキリンが、終始前にいる状態で進路がなくなっていた。
「外からもラーグルフに蓋をされる格好で、身動きが取れなくなって窮屈な走りを強いられているマテンロウレオの姿があります。昆先生のおっしゃる2頭がどの馬なのかは分かりませんが、少なくとも1頭はメイショウゲキリンだと思います。これなら参考外という言葉も納得です」(同)
横山典騎手にとって想定外だったのは、よりによってメイショウゲキリンの鞍上が、三男の武史騎手だったことだろう。前走は逃げて3着に好走しただけに、おそらく行くと思われたが、消極的なポジション取りにも見えた。
「着順は悪いけど、次の本番はメンバー的にチャンスがあると思っている」
敗戦を前向きに捉えた昆師だが、敗因は馬の状態よりも、展開が向かなかっただけともいえそうだ。マテンロウレオの手綱を取った横山典騎手も、まさか武史騎手と横山一家で“同士討ち”のような格好になるとは思っていなかったのではないか。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。