JRAアスクビクターモアの社台ファームに「逆襲」の予兆! 多士済々の布陣でノーザンファームに挑戦状
ノーザンファームを止めるのはやはり社台ファームしかいない――。
6日、中山競馬場で行われた弥生賞ディープインパクト記念(G2)は社台ファームの生産馬、アスクビクターモア(牡3歳、美浦・田村康仁厩舎)が勝利。レース名に冠されたメンバー唯一のディープインパクト産駒が2歳王者ドウデュースの牙城を崩し、皐月賞(G1)の有力候補に名乗りを上げた。
ペースをつくったのは好発を決めたリューベックだった。逃げも予想されたメイショウゲキリンが控えたことで、ゆったりとした流れで各馬は1コーナーへ。そんな中、やや離れた2番手を追走したのがアスクビクターモアだった。
ペースを読み切った田辺裕信騎手の判断も吉と出た。直線早めに先頭に立つと、1番人気ドウデュースが徐々にその差を詰めてきたが、最後はクビ差で退けた。アスクビクターモアはこれで皐月賞の切符を手中に収め、日本ダービー(G1)、菊花賞(G1)へと続く三冠ローテーションも組みやすくなった。
■社台ファームに反撃の予兆
また、同じ社台ファーム生産馬のボーンディスウェイ(牡3歳、美浦・牧光二厩舎)も好位から3着に粘り込み、皐月賞の優先出走権を獲得した。
これで1月の京成杯(G3)を制し、皐月賞に直行予定のオニャンコポン(牡3歳、美浦・小島茂之厩舎)と合わせて社台ファーム生産馬の3頭がクラシック1冠目へと向かうことが濃厚だ。
これら以外にも、2週間後に行われるスプリングS(G2)にはサトノヘリオス(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)がスタンバイ。打倒ノーザンファームに燃える社台ファームの多士済々メンバーが今年の牡馬クラシック戦線で旋風を巻き起こす可能性は十分あるだろう。
「名前が挙がった4頭以外にも先日のすみれS(L)を制したポッドボレット(牡3歳、栗東・辻野泰之厩舎)が青葉賞(G2)か京都新聞杯(G2)からダービーに駒を進める予定のようです。
今年の社台ファーム生産馬はここ数年と比べてもかなり層が厚いですね。これだけの頭数を牡馬クラシックに送り込むのは久々ではないでしょうか」(競馬誌ライター)
皐月賞ではおそらく複数頭出しが濃厚。もしそうなれば、サウンズオブアース、ハギノハイブリッド、シャンパーニュの3頭を送り込んだ2014年の菊花賞(G1)以来となる。
それよりも多い頭数となると、12年の皐月賞と11年のダービー、菊花賞で6頭出しがあったが、ダービーではそれに迫る頭数を揃えられるか。ちなみに社台ファーム生産馬が最後に牡馬クラシックを勝ったのは13年の皐月賞を制したロゴタイプまでさかのぼる。
「ここ数年で牝馬クラシック制覇は何度かあった社台ファームですが、牡馬クラシック制覇は9年前ですか……。最後に社台ファームが生産者リーディングに輝いたのが2011年です。それ以降はノーザンファームの後塵を拝し続けてきましたからね。
ただ、今年の両雄の収得賞金額を見ても、かなり差は詰まってきています。社台ファームは三重県の鈴鹿市にいわゆる外厩と呼ばれる新たな育成施設を建設予定ですし、徐々に反撃態勢を整えているのでしょう」(同)
ノーザンファームの1強時代と言われて久しいが、数年後には再びライバルと切磋琢磨する2強時代がやってくるかもしれない。今年の3歳牡馬がその起点となる可能性は十分ある。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。