JRA打倒エフフォーリア1番手の「怪物」ジャックドールはサイレンススズカでもミホノブルボンでもない? 最もイメージに近い走りをしていたのは?
13日に中京競馬場で行われた金鯱賞(G2)で2着のレイパパレに2馬身半差をつけて圧勝し、一部では早くも「怪物」かと噂されているジャックドール。3歳夏の条件戦から挑んだ初の重賞戦で1番人気に応えて5連勝を決めた。
それまでも条件戦を圧勝してきたジャックドールだが、重賞で通用するかどうかが問われた試金石の一戦は、最高の結果でサクセスロードの幕を開けたという形になった。
同馬のレースぶりの派手さはその着差だけではない。積極果敢な逃げに魅了されるファンも多いのではないだろうか。
人気薄の穴馬がノーマークを追い風に他馬を出し抜く、ただの前残りではなく、ライバルからマークを受けやすい人気馬が、どこからでもかかってこいと言わんばかりに逃げる姿に、かつてのサイレンススズカやキタサンブラック、同じく栗毛のミホノブルボンを思い浮かべるファンもいるだろう。
とはいえ、スタートからゴールまで先頭で駆け抜ける作戦の逃げといっても、すべてが同じという訳でもないのが、競馬の奥深いところである。今回は大まかな説明とはなるものの、代表的な3つのパターンを紹介してみたい。
一つ目は、2月の中山記念(G2)を逃げ切り勝利したパンサラッサのパターン。同じ逃げでもジャックドールとパンサラッサでは少々異なっているようにも感じられる。
パンサラッサの逃げは、道中で後続を何馬身も引き離して逃げる、いわゆる「大逃げ」と呼ばれる戦法だ。周りの出方を見ることもなく、とにかくスピードを武器に飛ばしていくタイプはサイレンススズカを彷彿とさせる。ツインターボもまた同じタイプの馬だった。
二つ目は、前後半で差が無く均一なラップを刻むミホノブルボンのようなタイプだ。スパルタ調教で知られる故・戸山為夫調教師によって坂路で鍛え上げられた筋肉質な馬体と、機械の如く正確なペースで逃げを打つことから「サイボーグ」と評されたほどだった。
三つ目は、ラップペースで前半より後半の方が速いロングスパートを得意とするタイプ。スピードの違いで前々の位置でレースを進めることも多いが、必ずしも逃げなければダメという訳でもない。現役馬で言えば昨年の菊花賞馬タイトルホルダーもこのタイプに似ている。
この「ロンスパ」を得意とした馬で有名なのは、近年だとキタサンブラックが挙がるだろう。引退レースの2017年有馬記念(G1)では、スタートで馬群の先頭につけるとそこで折り合い、4コーナーギリギリまでペースを上げないように我慢して、直線を向いてから一気にスパートして離し、迫る後続を完封した。
これ以外にダイワスカーレットなども、他に行く馬がいなければいつでもハナに立てるほどのスピードを持ちながら、ワンテンポ早い仕掛けでゴールまで長くいい脚を使う馬だった。
金鯱賞の芝2000mで前半1000mを59秒3で走り、後半を57秒9で走り抜けたジャックドールもまた、こちらのタイプに近いイメージかもしれない。
(文=パッパラー山中)
<著者プロフィール>
皇帝シンボリルドルフの代表産駒トウカイテイオーの舞うようなフットワークに魅せられて競馬を始める。人生で1番泣いたのは前年の大敗から1年ぶりの復活勝利を決めた1993年の有馬記念(G1)。感動のあまり競馬場で泣いて電車で泣いて家で泣いた。馬券はパドック派。今までで1番「こりゃすんげえ馬体」と思ったのはサクラケイザンオー。