JRA 福永祐一「意欲の連続騎乗」は実るか!? 本人出演のアカウントも人気なアルナシームとともに皐月賞(G1)「最後の切符獲り」へ

アルナシーム 撮影:Ruriko.I

 20日、中山競馬場で行われる皐月賞トライアルのスプリングS(G2)。登録馬を見てみると、前走で1着だったのは未勝利組だけという中心馬不在の組み合わせ。共同通信杯(G3)5着のアサヒや、京成杯(G3)4着のアライバルら、多くの出走メンバーは“巻き返し”を期す一戦となる。

 では、牡馬クラシック戦線に名乗りを上げるのはどの馬か……。そこで今回取り上げたいのが、人馬ともにこのチャンスにかける福永祐一騎手とアルナシーム(牡3歳、栗東・橋口慎介厩舎)のコンビだ。

 昨年7月に函館で新馬勝ちを果たした同馬は、休みを挟んだ2戦目は東京スポーツ杯2歳S(G2)に挑戦。しかし、スタートで出遅れて最後方からの競馬となると、名手・武豊騎手でも制御できないほどの前進気勢を見せ、3コーナーを過ぎたあたりでは一気に先頭へ。直線半ばまでは粘りを見せるも、さすがに最後は馬群に飲み込まれて6着という結果に終わった。

 それでも、中3週で池添謙一騎手との新コンビで挑んだ朝日杯FS(G1)では、馬具の工夫なども功を奏して折り合いが付き、強力なメンバーを相手に4着と善戦した。そして前走のつばき賞(1勝クラス)は、スローペースを逃げて上がり最速32秒9をマークしたテンダンスに次ぐ2着。敗れはしたが、緩い流れの1800m戦でもしっかりと折り合いが付き、最速タイの上がり32秒9を記録した内容は決して悲観するものではなく、収穫の多い一戦だったと言える。

 一方で、収穫だけでは先に進むことはできない。クラシック戦線に殴り込むためには“結果”が必要だ。今回のスプリングSで一発回答を出し、挑戦権を掴み取らなければならない。そして、その想いはきっと鞍上も同じだろう。

 2年前の春、コントレイルとのコンビで皐月賞(G1)・日本ダービー(G1)を連勝した福永騎手。昨年も皐月賞はレッドベルオーブに騎乗して8着に終わったが、ダービーではシャフリヤールとのコンビで皐月賞馬のエフフォーリアを撃破。後の年度代表馬に初黒星をつけて、大舞台での存在感を改めて見せつけた。

福永祐一騎手

 しかし、今年のクラシック戦線を見ると、福永騎手の“相棒”と呼べる存在はいない。直近ではすみれS(L)でポッドボレットを勝利に導いているが、こちらは皐月賞をパスして京都新聞杯(G2)に向かうことが報じられている。

 皐月賞に進むお手馬が不在の福永騎手にできることはただ一つ。目の前のトライアルレースに全力で挑み、アルナシームを皐月賞の舞台へと導くことだ。

 つばき賞の戦前、橋口師は調教に初めて乗った福永騎手から「この馬、短い距離の馬じゃないですね」と言われたことを明かしている。ファーストコンタクトで馬のイメージを掴み、レースは結果こそ2着も上々の内容。福永騎手自身も「レースにおける課題はクリアできていました。折り合いという面では収穫のあるレース」と前向きなコメントを残しており、「今後距離を延ばしていく上でも、あそこで我慢できたのは今後に生きてくると思います」と先を見据えた。

 それからほどなくして、スプリングSも同じコンビで挑むことが決定。このクラスのトップジョッキーとなれば、騎乗馬の選択肢も少なくないはず。その中で、1勝クラスで敗れた馬に継続して騎乗することを即決したというところからも、アルナシームのポテンシャルの高さに関して相当な手応えを得ていることは容易に想像がつく。

 しかし、つばき賞ではレースでの折り合いこそついたものの、ゲート入りを嫌がるそぶりを見せた。福永騎手は「迷惑をかけました。新しい課題が見つかった」と不安を漏らし、レース当週にゲートの再審査が課せられていたが、16日に無事合格。これで心置きなく日曜のレースに向かうことができる。

 SNSでは「アルしゃん」という関係者と思しきアカウントも現れ、5000人以上のフォロワーを持つほど人気を得ているアルナシーム。投稿内容は日々のかわいらしい一面を映した動画がメインだが、一度レースに入れば歴戦の名手でも制御できないほどの強い闘争心を兼ね備え、力強くターフを駆け抜ける。そんなギャップも大きな魅力のひとつだ。

 武豊騎手も、池添謙一騎手も絶賛したその背中。あとはその小柄な体に秘めた能力をいかにして最大限発揮させるか……。すべては“意欲の連続騎乗”を決断した鞍上の手腕にかかっている。

(文=木場七也)

<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。

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