JRA 今月急死「レースを愛した」個性派オーナーがドバイで3頭出し! 寵愛受けたM.デムーロが「Wヴェローチェ」で弔い星へ
愛媛県松山市に本社を置くオオノ開発株式会社。同社の代表取締役社長を務める大野剛嗣氏が今月2日に逝去した。50歳の若さだった。
大野氏はスーパーGTに参戦するMax Racingのオーナーとしても知られ、自らドライバーとしてステアリングを握ったことも。数年前からは馬主として競馬界にも参入。初めて所有した2014年生まれの5頭の中には、中央と地方のダート重賞を2勝したマテラスカイもいた。
その後も徐々に所有頭数は増え、これまで合計16頭がJRAでデビュー。うち9頭が勝ち上がり、マテラスカイ以外にステラヴェローチェが重賞を2勝している。また、2年前にはサンバサウジダービーCにフルフラットを出走させ、海外で大金星を挙げている。
今も大野氏名義の8頭が中央で走っているが、なんとそのうちの3頭が今週末に行われる『ドバイワールドカップデー』に出走するという。
「大野オーナーはとにかく“レース”が大好きだったようですね。主軸は自動車でしたが、馬主としても数年で重賞勝ち馬を輩出するなど強運の持ち主でした。
そんな大野オーナーが贔屓にしていたのが武豊騎手です。これまでどの騎手よりも断トツで多く28回も起用しています。フルフラットがサウジダービーで勝った時の鞍上も武騎手でした。そんな武騎手に次ぐ16回の起用数を誇るのがM.デムーロ騎手です」(競馬誌ライター)
デムーロ騎手は今週末のドバイに参戦する大野氏所有の3頭のうち2頭の手綱を任された。昨年のクラシックを賑わせたステラヴェローチェ(牡4歳、栗東・須貝尚介厩舎)と同世代でスタミナ自慢のヴェローチェオロ(牡4歳、栗東・須貝尚介厩舎)である(もう1頭のフルフラットは、金沢競馬所属の吉原寛人騎手が騎乗予定)。
そのデムーロ騎手は22日に『netkeiba.com』に掲載されたインタビュー記事でこう語っている。
「僕、お会いしたことはないんだけど、大野(剛嗣)さんが亡くなったと聞いて、すごくショックだった」と、その胸中を明かし、「いろんな調教師の先生から、『大野オーナーはミルコが好きだから、乗ってほしい』とずっと言われていました」と、オーナーから寵愛を受けていたことを明かした。
「オーナーのためにも頑張らなくちゃいけないですね」と前を向いたデムーロ騎手は、“Wヴェローチェ”で2連勝を狙う。
ドバイシーマクラシック(G1)に出走するステラヴェローチェは、不良馬場で重賞を2勝しているように重い馬場がベスト。ただし、これまで掲示板を外したことはなく、どんな馬場にも対応は可能だ。デムーロ騎手は直近2戦で騎乗しており、癖はつかんでいるはず。展開次第では大駆けがあっても驚けない。
一方、芝3200mの長丁場、ドバイゴールドカップ(G2)に挑戦するヴェローチェオロは、重賞で5戦して、5着4回、6着1回と厚い壁に阻まれている。ただし、初めての海外で血統の後押しに期待できそうだ。
祖父のステイゴールドは引退レースで香港ヴァーズ(G1)を制したが、同年には当時G2だったドバイシーマクラシックを海外初遠征で勝っている。また、母の父タイキシャトルも自身唯一の海外レース、フランスのジャック・ル・マロワ賞(G1)を勝利している。
ステラヴェローチェ、ヴェローチェオロ、そしてゴドルフィンマイル(G2)に出走するフルフラット。3頭はドバイの地で大野オーナーに弔い星を届けることはできるだろうか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。