JRA高松宮記念(G1)福永祐一「作戦非公開」も痛恨の空振り、グレナディアガーズ、メイケイエールを襲った不利に名手二人もお手上げ
27日、中京競馬場で行われた高松宮記念(G1)は、8番人気の伏兵ナランフレグが勝利。上位4番人気までが馬券圏外に消え、三連単は278万4560円の大波乱となった。
まさに“春の嵐”となった春のスプリント王決定戦。上位人気馬のなかで運にもツキにも見放されたのが2番人気メイケイエールと3番人気グレナディアガーズ(牡4歳、栗東・中内田充正厩舎)の2頭だった。
「中京芝1200mは外枠不利というのが定石ですからね。人気2頭が8枠に入った時点で評価を下げたファンも少なくなかったと思います。ただ、週末は雨予報だったので、雨の降り方と馬場の乾き方次第では、逆に外枠が有利になる可能性もありましたが……。
終日、重馬場で行われた日曜の中京芝は内を通った馬に大きなアドバンテージがありました。奇しくもメイケイエールとグレナディアガーズに騎乗した名手2人は、レース後にほぼ同じコメントを残しています」(競馬誌ライター)
「内が有利の馬場で、今日の結果はしょうがない感じです。あれ以上内には行けません」(メイケイエール騎乗の池添謙一騎手)
「内を回ってきた馬が勝ったレースです。外枠からあれ以上内には行けません」(グレナディアガーズ騎乗の福永祐一騎手)
2人のコメントから、17番枠と18番枠からでは、どうあがいても内には潜り込めず、好走は厳しかったことが読み取れる。それでもメイケイエールの方は勝ち馬と0秒1差の5着に健闘。唯一、後方から外を通って最後までいい末脚を見せていた。
一方で、後方のまま12着に沈んだのが福永騎手と初コンビとなったグレナディアガーズの方だ。
実は、福永騎手はレース当日に公開されたYouTubeチャンネル『カンテレ競馬【公式】』に登場し、高松宮記念に向けての意気込みなどを語っていた。
いつも通り、ミサイルマン岩部彰とリモート形式でのインタビューに臨んだ福永騎手。まず、調教でのグレナディアガーズの乗り味を絶賛し、1200mの距離適性にも「走っているフォームを見たら短いところ(向き)です」と断言。マイルよりもスプリントに高い適性があるという見立てを披露した。
さらに、ファンから大好評のボードを使った“展開予想”を求められたが、福永騎手は何とこれを拒絶。「みんな(手の内を)分かっちゃうと、優位性が保てなくなる。あまり言うメリットがない」と真顔で、戦法を機密にする理由を語った。
「昨年から福永騎手は同番組で自身が考えるレース展開や出走馬の位置取りなどを、コース図や馬名の書かれたマグネットを使って解説してきました。多くのレースでズバズバ言い当て、ファンの間では非常に好評だったのですが……。
確かに福永騎手の言う通り、ライバル騎手がこの動画を目にしたら、参考にできますからね。ある意味、ライバルに手の内を明かしていたということに気づいたのかもしれませんね」(競馬誌ライター)
それでも、サービス精神旺盛な福永騎手。番組の無理なお願いに応える形でレースのカギを2つ挙げた。それが、「スタート」と「位置取り」である。
スタートについては、「出遅れて勝てる距離じゃない」と、前走・阪神C(G2、鞍上はC.デムーロ騎手)で出遅れたことを念頭に、好スタートを切ることは必要不可欠であると説明。位置取りに関しては、中団後方から豪脚を披露した前走の形にはこだわらないと話し、先行したいことがうかがえる受け答えだった。
ところが肝心のレースでは、最後入れの大外枠だったにもかかわらず、まさかの立ち遅れ。当然、初スプリントの流れについていくのが精いっぱいで、後方からの競馬を強いられた。自身がカギに挙げた「スタート」と「位置取り」は大失敗に終わり、グレナディアガーズとの初コンビはほろ苦い結果となってしまった。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。