JRA大阪杯(G1)「逃げ切りで勝つのは難しい」と理解しながら固執したジャックドール…「逃げ」を捨てた怪物牝馬と分かれた明暗
4月3日(日)、阪神競馬場で行われた大阪杯(G1)は単勝8番人気ポタジェが勝利する波乱の結果に。エフフォーリアと共に「2強」として注目を集めていたジャックドール(牡4歳、栗東・藤岡健一厩舎)は5着に敗れた。
得意の形で逃げることに成功したジャックドール。理想的なレース運びに思われたが、直線では伸びを欠いた。一方で、ジャックドールを見る形で「徹底マーク」して2着に好走して見せたのがレイパパレ(牝5歳、栗東・高野友和厩舎)である。
昨年の大阪杯では逃げを打ち、コントレイル、グランアレグリアといった怪物をねじ伏せたレイパパレであるが、実はそれ以降は1度も逃げを打っていない。得意の「逃げ」を封印したレイパパレは一時低迷し、昨秋に挑んだ3戦では全く結果を残せなかった。
レースでは折り合いを欠いて前に行きたがる面を見せており、「なぜ逃げないのか」といった声も多く上がっていた。それでも陣営は目先の勝利よりも、徹底して控える競馬を教え込むことを優先。今回のレースは勝利にこそ一歩届かなかったが、レイパパレの「モデルチェンジ」がようやく実を結んだ格好である。
ジャックドール陣営は前走の金鯱賞(G2)以前から「ここから先、重賞や大きいレースになるほど、このまま逃げ切りで勝つのは難しい」と脚質転換の必要性を滲ませていたが、今回も従来通りの「逃げ」を選択。
しかし今回のG1の舞台では簡単には逃げさせてもらえず、スタート後は同型のアフリカンゴールド、レイパパレに競りかけられる展開に。これが災いしてか、1000m通過が58.8秒というやや暴走気味のラップを刻み、最後は失速してしまった。
ジャックドール陣営は金鯱賞の以前から「逃げ」て勝つことの限界を知りながら、結局は普段と同じ戦法で戦った。一方でレイパパレ陣営は、金鯱賞を3番手で控える競馬の「最終テスト」に充てることができた。「逃げ」に固執したジャックドールと、「逃げ」を捨てて進化を遂げたレイパパレ、今回の大阪杯では2頭の明暗がハッキリと分かれる形となった。
実は過去10年のJRA・芝2000m以上のG1レースで、単勝3番人気以内で「逃げて」勝利を収めた例は3度のみ。その3例はすべてキタサンブラックが勝利したレースである。
「逃げ馬」はレースの展開・ペースを握る重要な存在、それが実力上位の馬であれば警戒されるのは必然である。無警戒の人気薄であればともかく、周囲からの徹底したマークを受けながらG1で逃げ切ることは、それこそキタサンブラック程の抜きんでた実力が無ければ難しいのである。
ジャックドールが今後G1戦線で戦っていくには、レイパパレのような大胆な「モデルチェンジ」が必要になるだろう。しかし一度逃げることを覚えた馬に、控える競馬を教え込むことは簡単ではない。
更なる進化を求めて脚質転換を図るのか、「逃げ」にこだわる茨の道を往くのか。ジャックドール陣営の今後の選択に注目したい。
(文=エビせんべい佐藤)
<著者プロフィール>
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。