JRA「ウマ娘」藤田晋オーナーの重賞初勝利なるか?「G3降格危機」でも馬主的には美味しい?ニュージーランドT(G2)
9日、中山競馬場で行われるニュージーランドT(G2)。3着馬までにNHKマイルC(G1)の優先出走権が与えられるトライアルレースに、所有馬2頭を登録(デュガは回避の見込)しているのが藤田晋オーナーだ。
『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)を手掛ける株式会社サイバーエージェントの社長としても知られる藤田オーナーは、2021年にJRAの馬主としてデビュー。初年度から5頭の所有馬がすべて勝ち上がると、このレースにも登録しているジャングロは中京2歳S(OP)とマーガレットS(L)を連勝。悲願の重賞初勝利に向けて、矛先を向けたのがマイルG2のこの舞台だった。
ニュージーランドTと言えば、今年1月にJRAから「格付けに対する警告」が発表されたことでも話題に。3歳G2の基準となるレースレーティングが「110.00」であるのに対し、同レースの年間レースレーティングは2019年から「106.75」、「106.50」、「103.50」。昨年の数値に関してはコロナ特例によりノーカウントとなったものの、3年連続で大きく基準を下回ってしまったことで、G2の地位が揺らいでいる状態だ。
この「年間レースレーティング」とは、1月に発表される「JPNサラブレッドランキング」で各馬に付与されるレーティングの数値によって決まるもの。当該レースにおける上位4着までの馬の公式レーティングの平均値がそのままレースの格に反映されるということで、当該レースのレベルの高さに加え、当該レースに出走した馬がその後にどんな飛躍を見せたか、という部分が大きく関わってくる。
その数値が低いということは、要するにレースレベルが高くなく、そこに出走していた馬のレベルも高くなかった、ということ。それでいてG2なので1着賞金は5400万円と高額で、3着までに入ればG1の出走権も手にすることができる。馬主から見れば、JRA屈指のチャンスレースとなっているのだ。
今年発表された重賞競走における年間レースレーティングを見ても、その事実は明らか。以下は3歳限定のG2戦における昨年の年間レースレーティングと、直近3年の平均値である。
・弥生賞ディープインパクト記念 = 117.00 / 113.08
・スプリングS = 108.75 / 109.42
・青葉賞 = 110.0 / 109.83
・京都新聞杯 = 107.00 / 108.50
・セントライト記念 = 111.00 / 110.83
・神戸新聞杯 = 115.00 / 116.08
・チューリップ賞 = 106.50 / 107.67
・フィリーズレビュー = 105.00 / 104.83
・フローラS = 107.75 / 106.92
・ローズS = 109.00 / 108.00
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・ニュージーランドT = 103.50 /105.58
こうして比較してみると、牝馬限定戦も含めた全11のG2レースの中で、昨季の年間レースレーティング「103.50」というのはワーストの数値。同週に桜花賞(G1)があり、翌週には皐月賞(G1)が控えていることで、順調に賞金を重ねてきた世代の強い馬たちは出てこないというのが大きな要因としてあるが、もうひとつ考えられるのがアーリントンC(G3)の4月移行だろう。
1992年にペガサスSから改称された同レースは、2018年から開催時期を4月に変更。ニュージーランドTの翌週、皐月賞の前日に阪神競馬場で行われるNHKマイルCのトライアルレースへと生まれ変わり、こちらも3着までの馬に優先出走権が付与されることとなった。
このアーリントンCの昨年の年間レースレーティングは「112.50」。3歳限定のG3戦としては共同通信杯、毎日杯に次ぎ、シンザン記念と並ぶレベルの高さとなっている。こうしてトライアルが東西に分散したことも、ニュージーランドTのメンバーがより手薄になる要因として考えられる。
それでも、勝ち馬をさかのぼると“芦毛の怪物”ことオグリキャップの名前も出てくるような歴史を誇るレースであり、ほかにもシーキングザパールやエルコンドルパサー、最近ではカレンブラックヒルがここを勝って挑んだNHKマイルCでG1タイトルを手中に収めている。
伝統のG2は今年こそ近年の停滞ぶりを晴らし、その“格”を誇示することができるか。そのためにも、今年こそはハイレベルな熱戦に期待したい。
(文=木場七也)
<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。