JRAノーザンファームに「首位陥落」の危機!? 快進撃の個人馬主が王者に肉薄、「40年ぶり」快挙も夢ではない?
約39億8344万円。これは今年の中央競馬全レースでノーザンファーム生産馬が獲得した賞金総額だ。生産者リーディング2位の社台ファーム(約19億1430万円)にダブルスコアをつけ、今年もすでに“独走”態勢に入っている。
馬主リーディングを見ても、やはりノーザン系の一口クラブが強く、3位までの上位を独占している。
【馬主リーディングトップ3、4月3日現在】
1位 キャロットファーム 約7億 780万円
2位 シルクレーシング 約6億7439万円
3位 サンデーレーシング 約6億4609万円
かつて、馬主リーディング争いは社台レースホースの独壇場だった。1983年から04年まで実に22年連続でリーディングを獲得。長らく1強時代が続いた。ところが、ノーザンファームの台頭で勢力図は徐々に変化し、2000年代に入ると、社台RHとサンデーRの2強時代が到来。04年から13年までの10年間はこの2強がワンツーを決めていた。
その後、社台RHが低迷すると、キャロットFが躍進。14年には初のリーディングに輝いた。さらに11年にノーザンファームと提携を結んだシルクRがここ数年で一気に台頭。リーディングこそ獲得したことはないが、サンデーR、キャロットFとの三つ巴が定着している。
ここ数年ですっかり見慣れた馬主リーディング争いの光景だが、今年はある大物個人馬主が“ノーザン御三家”に肉薄している。すでにお分かりだろう。金子真人オーナー(名義は金子真人ホールディングス)のことである。
「先週の大阪杯(G1)で所有馬のポタジェが勝利を収め、金子オーナーは2億円を獲得しました。先週までは(馬主リーディング)5位でしたが、これで社台RHを抜いて4位に浮上。トップのキャロットFには(約)6000万円差まで迫っています。
さすがに御三家とは、そもそも所有頭数に大きな差があるので、金子氏が馬主リーディングを獲得することはないと思います。それでも、今週末の結果如何によっては一時的に首位に浮上する可能性があります」(競馬誌ライター)
10日の桜花賞(G1)で1着賞金1億3000万円を稼げば、キャロットFを抜く可能性はある。ところが、今年の桜花賞に金子氏の所有馬はエントリーしていない。一方、キャロットFはナミュールとフォラブリューテの2頭出し、サンデーRはプレサージュリフト、ブルクレスタなど4頭出しで挑む(シルクRはエントリーなし)。
現実的には金子氏と“御三家”の差は広がる可能性の方が高いだろう。ところが、金子氏のすごいのは、土曜日に行われる2つの重賞レースにしっかりと有力馬を確保しているところだ。
土曜中山のニュージーランドT(G2)にはリューベック、そして阪神牝馬S(G2)にはアカイトリノムスメが出走を予定。どちらも上位人気が予想される有力馬である。もしこの2頭が優勝すれば、合計1億900万円を懐に入れることになる。
結果いかんでは、週明けに金子氏がちゃっかりリーディング首位に立っている可能性もあるだろう。もし個人馬主がリーディングに輝けば1982年の松岡正雄氏以来となるが、金子氏の“神通力”なら、そんな偉業すらあっさり達成してしまうかもしれない。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。