JRAフローラS、マイラーズC、福島牝馬S「あるぞ」3重賞ジャック! 近年注目「爆買い」オーナーの“モチベーション”やいかに!?
「ダービーを獲りたいという夢があるから、楽しい馬主ライフを送れています」
2019年8月14日に掲載された『スポニチ』のインタビュー記事で馬主としての夢を語ったのは、「ホウオウ」の冠名で知られる小笹芳央氏だ。
2歳下の弟、小笹公也氏の「テーオー」冠名を引き合いに出し「帝王に対抗するなら、法王がええなぁと思って」と、同記事で冠名の由来も明かしていた(ホウオウは芳央氏の名前の音読みでもある)。
芳央氏は、早稲田大学からリクルートに入社したエリートで、2000年に株式会社リンクアンドモチベーションを設立。「モチベーション」に着目した組織変革のコンサルティングを手掛けてきた。現在は複数のグループ会社を束ねる代表取締役会長を務めている。
そんな芳央氏に限らず、馬主業の“モチベーション”の大きな1つが「ダービー制覇」である。近年、芳央氏もセレクトセールなどで大いに存在感を発揮している。
対照的な「ホウオウ」「テーオー」兄弟
「馬主歴約20年を誇る弟の公也氏に対して、兄の芳央氏は8年目。まだ新鋭オーナーの部類に入ると思いますが、昨年のセレクトセールではキズナ産駒を4億円以上の高値で競り落とすなど、“爆買いオーナー”としても注目度は高まっています。
弟の方は日高生産のダート血統馬が中心。セールでも5000万円以上の馬を購入したのは過去1頭だけという手堅いオーナーです。それでも昨年は、所有馬のテーオーケインズが帝王賞(G1)とチャンピオンズC(G1)を制覇。先輩オーナーとして面目を保ちました。
一方、兄は1億円以上で購入した馬がすでに10頭を超えています。一足先にG1を制した弟に負けじと、デビュー前の良血馬もすでに大挙スタンバイしている状態ですよ」(競馬誌ライター)
そんな芳央氏は、今週末に開催される3重賞すべてに所有馬を送り込む。
まず土曜福島のメイン・福島牝馬S(G3)には、前走3勝クラスのスピカSを勝ったホウオウエミーズ(牝5歳、美浦・池上昌和厩舎)が登場する。これまで重賞にも3度挑戦しているが、最高着順は昨年6月マーメイドS(G3)の5着と、重賞の高い壁が立ちはだかる。
それでも丸田恭介騎手とコンビを組むようになってから成績は安定。これまで崩れたレースは出遅れなどで、後方からの競馬を強いられたときがほとんどだ。課題のスタートを決めて、先行策を取ることができれば、今年の高松宮記念(G1)を勝った鞍上の手腕に期待できる。
日曜東京のメイン・フローラS(G2)にはホウオウバニラ(牝3歳、栗東・安田翔伍厩舎)がスタンバイ。これがデビュー3戦目とキャリアは浅いが、休み明けの前走・アルメリア賞(1勝クラス)はピースオブエイトの3着に好走している。勝ち馬はその後、毎日杯(G3)を制しており、牝馬同士のここなら一発があっても驚けない。
芳央氏が所有した半兄ホウオウサーベルは、ワールドプレミアが勝った19年の菊花賞(G1)で5番人気に推された期待馬だったが、屈腱炎を2度発症し、引退を余儀なくされた。そんな兄の思いも背負い、オークス(G1)の出走権獲得を狙う。
そして日曜阪神メインのマイラーズC(G2)に出走するのが、ホウオウアマゾン(牡4歳、栗東・矢作芳人厩舎)だ。3頭の中で最も期待値の高いのがこの馬だろう。
昨年のアーリントンC(G3)を制するなど、ここまで1億3000万円あまりを獲得した孝行息子だが、まだ“元”は取れていない(18年の当歳セレクトセールにて1億5120万円で購入)。前走の東京新聞杯(G3)は12着に惨敗したが、大崩れしていない阪神コースなら、巻き返しの可能性は十分ある。
エミーズはヴィクトリアマイルへ、バニラはオークスへ、そしてアマゾンは安田記念へ……。G1の前哨戦で放たれる「ホウオウ3本の矢」は、いったい何本が的を捉えることになるだろうか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。