JRAキタサンブラック&ドゥラメンテ「同世代」10歳馬が堂々の重賞制覇! 絶対王者を止めた”衝撃”の勝利から1年半…かつての主戦騎手も裏開催で大爆発
14日、前日の雨の影響が残ったこの日の中京は、1番人気の馬たちにとって苦難の1日だった。
朝一の1Rで単勝1.5倍の支持を集めたアルファカリーナが3着に敗れると、そこからなんと7連敗……。1番人気が連対さえ叶わない波乱の流れを止めたのが、8Rの京都ハイジャンプ(G2)で久々の勝利を挙げたタガノエスプレッソ(牡10歳、栗東・五十嵐忠男厩舎)だった。
2020年の京都ジャンプS(G3)以来、勝利から遠ざかっていたタガノエスプレッソだったが、かつての勝利は最強ジャンパー・オジュウチョウサンの連勝を止めたことで、大きな話題となった。
奇しくもこの日、手綱を取ったのがオジュウチョウサン主戦として有名な石神深一騎手。陣営から「積極的に」というオーダーが出ると、迷わず“あの時”の逃げを再現して見せた。結果的に、ライバルに塩を送る形となったが「最後は危ないと思いましたが、相手も追い上げてきたのでしんどかったのでしょう」と、会心の騎乗を振り返っている。
タガノエスプレッソはキタサン&ドゥラと同世代
それにしてもオジュウチョウサンが今年11歳なら、タガノエスプレッソも今年10歳と老いてますます盛んといったところか。そのタフネスぶりには、ただただ畏怖の念を抱くばかりだ。
タガノエスプレッソが劇的な勝利を飾った京都ハイジャンプから約35分後、同じ中京で行われたあずさ賞(1勝クラス)では、単勝1.6倍に支持されたキタサンブラック産駒のガイアフォースが、ドゥラメンテ産駒のセントカメリアに逃げ切りを許してしまい、またも1番人気が敗れてしまった。
多くのファンが知る通り、キタサンブラックとドゥラメンテは2015年の牡馬クラシックを分け合ったライバル関係。強烈な逃げを武器にG1・7勝を挙げたキタサンブラックに対して、直接対決で一度も負けなかったドゥラメンテはデビューから5戦連続で上がり最速を記録するなど、強烈な末脚が武器だった。
そんな歴史的名馬2頭と共にクラシックを戦ったのが、若き日のタガノエスプレッソである。
「次は色々と調整しなくてはいけないので……。ここですぐには決められませんが、一応朝日杯(FS)を目標にしたいと考えています」
タガノエスプレッソの重賞初勝利は、2014年のデイリー杯2歳S(G2)である。しかし、レース後の五十嵐調教師のコメントからも、陣営は勝てるとは思っていなかったのかもしれない。実際に本馬はデビューから3戦目に未勝利戦を勝ち上がったばかりで、9頭中5番人気という伏兵だった。
その後、朝日杯フューチュリティS(G1)へ駒を進めたタガノエスプレッソだったが、初重賞をもたらした主戦の岩田康誠騎手は、後にNHKマイルC(G1)を勝つクラリティスカイに騎乗している。代わりに抜擢されたのが、デビュー3年目の菱田裕二騎手だった。
スタートで出遅れる若さを見せたレースは残念ながら6着に敗れてしまったが、菱田騎手はそのまま主戦に抜擢される。翌年には、ドゥラメンテやキタサンブラックを相手にキャリア初のクラシック完走を果たし、騎手にとって大きな経験を得た。
「大きな舞台に立たせてもらったのに、ものにできなかった。全然満足してないし、責任を果たせなくて、未熟さを強く感じた。もっと技術を向上させないと」と『日刊スポーツ』の取材に決意を語ったのは、翌2016年の年明けのことだ。
あれから6年、テーオーロイヤルで2月のダイヤモンドS(G3)を勝った菱田騎手は、先日の天皇賞・春(G1)でも積極的に勝ちに行く競馬を披露したものの3着に終わっている。この日は新潟での騎乗だったが、かつての相棒の走りに触発されたのか、怒涛の騎乗機会3連勝を挙げるなど大活躍だった。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。