JRA日本ダービー(G1)「回避」名伯楽“秘蔵っ子”が戦列にカムバック! エフフォーリア「強奪未遂」C.ルメールに訪れた悲しき顛末

 15日、JRAの公式ホームページでついに日本ダービー(G1)の登録馬が発表された。

 フルゲート18頭の狭き門に、今年は22頭の精鋭たちがエントリー。現在のところ重賞勝ち馬でも除外の可能性があるなど、出走ボーダーも例年以上に高くなっているようだ。

 だが昨年、そんな競馬の祭典・日本ダービーへの優先出走権を持ちながらも、参戦を見送った馬がいる。今年2月に定年を迎えた藤沢和雄元調教師が管理していたキングストンボーイ(牡4歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)だ。

 4戦2勝のキャリアで挑んだ青葉賞(G2)で2着に入り、見事にダービーの優先チケットを獲得。翌年に引退する藤沢和師の最後のダービーになることでも話題を集めたものの後日、陣営はダービーには向かわないことを表明。

 回避する理由について藤沢和師は「1ヶ月で2度、東京の芝2400mを使うのは厳しい。ダービーが終わりではないし、馬の将来を考えてのこと」とコメント。師のモットーである「馬優先主義」「一勝より一生」を最後まで貫いた格好である。

 その後、神戸新聞杯(G2)で復帰を果たしたものの、不良馬場に苦しみ5着に敗れると、再び長期の休養に入った。その間に藤沢和厩舎が解散したことを受けて、現在の同馬は鹿戸厩舎の所属となっている。

 そんなキングストンボーイが21日、東京競馬場で開催されるメイS(OP)で久々にターフにカムバックする。鞍上は新コンビの横山武史騎手になる見込みだ。

 今回は約8ヶ月ぶりのレースになるが、『netkeiba.com』で行われている事前予想では、単勝オッズ1倍台の高い支持。オープン特別に入れば実績上位である上、本馬は兄に皐月賞馬のエポカドーロを持つ良血でもある。

 また、先日JRAから発表されたハンデは55キロ。これはG2レースで連対経験があることを踏まえると、やや恵まれた斤量であるといえるかもしれない。

 昨年2月の共同通信杯(G3)では、勝ったエフフォーリアや後のダービー馬シャフリヤールを上回る最速の上がりを繰り出して4着に入っている。長期の休み明けになるとはいえ、今回は負けられないレースになりそうだ。

「強奪未遂」C.ルメールに訪れた悲しき顛末

 なお、その共同通信杯が開催される前には、こんなエピソードもあったようだ。

C.ルメール騎手 撮影:Ruriko.I

 当時、キングストンボーイの主戦を務めていたのはC.ルメール騎手。それまで「ルメール騎手×藤沢和雄厩舎」の黄金タッグで数々のタイトルを制していただけに、最後のダービーを目指す藤沢和師にとっても当然の選択といえるだろう。

 だが、フランス人ジョッキーは同馬に対しての手応えがいまひとつ。どうやらエフフォーリアの方に騎乗するという話も持ち上がっていたようである。

「一歩間違えればあわや“強奪”にもなるところでしたが、このときは藤沢和師が待ったをかけたことによって、未遂に終わったというのがもっぱらの噂です」(競馬誌ライター)

 結局、ルメール騎手は元鞘のキングストンボーイに収まったが、後にG1を3勝するスーパーホースのエフフォーリアを奪われかけた主戦の横山武騎手は肝を冷やしたことだろう。

 だが、それから1年以上が経過し、キングストンボーイはそのエフフォーリアが所属する鹿戸厩舎へと転厩、横山武騎手と新タッグを結成するというのだから、ルメール騎手にしてみれば何とも皮肉な事の顛末である。

 なお、キングストンボーイは先月美浦に帰厩して順調に追い切りを消化しているようだ。ラストイヤーにもかかわらずダービー回避という英断を下した藤沢氏の“秘蔵っ子”が、久々でどんなレースを見せてくれるのか注目だ。

(文=冨樫某)

<著者プロフィール>
 キョウエイマーチが勝った桜花賞から競馬を見始める。まわりが学生生活をエンジョイする中、中央競馬ワイド中継と共に青春を過ごす。尊敬する競馬評論家はもちろん柏木集保氏。以前はネット中毒だったが、一回りして今はガラケーを愛用中。馬券は中穴の単勝がメイン、たまにWIN5にも手を出す。

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