JRA福永祐一が語ったM.デムーロ「致命的トラウマ」。オークス(G1)1番人気サークルオブライフ12着大敗に「これがあるから軸にできない」
22日、東京競馬場で行われたオークス(G1)は、3番人気のスターズオンアース(牝3歳、美浦・高柳瑞樹厩舎)が勝利。桜花賞馬が2冠を達成し、史上7頭目の牝馬三冠へ大手をかけた。
「ありがとうございます! よっしゃ!」
「僕はこのステージ久しぶりですから、お待たせしました!」
レース後の勝利騎手インタビューで喜びを爆発させたC.ルメール騎手は、これが嬉しい2022年のJRA初重賞。5年連続リーディングジョッキーが、ついに不名誉な連敗記録に終止符を打った。
その一方で、大一番でまたも“悪癖”を発揮してしまったのが、1番人気のサークルオブライフに騎乗していたM.デムーロ騎手だ。
2歳女王の復権を懸けた戦いはスタート直後、わずか数秒で終わってしまった。直前でサウンドビバーチェが除外となり、17頭によって争われた芝2400mのレース。3枠6番の好枠を引いたサークルオブライフは、あろうことか発馬でダッシュがつかずに出遅れ……。両隣にいたルージュエヴァイユとホウオウバニラに挟まれる形で最後方からのレースとなると、約7万人が詰めかけたスタンドからは大きなため息が漏れた。
結局、ほぼ最後方で迎えた最後の直線では、外から追い上げを見せたものの12着がやっと。勝負どころのデムーロ騎手のアクションも、どこか力なく見えたのは気のせいだろうか。
1番人気馬の出遅れ大敗だけにレース後、ネット上の競馬ファンもSNSや掲示板などで「また、やらかしたよ」「デムーロはこれがあるからな」「マジで信じられん」といったデムーロ騎手の出遅れに対する批判的な声が続々……。
中には「知ってた」「これがあるからデムーロは軸にできない」「馬じゃなくて騎手に出遅れ癖がある」といった、どこか冷めたコメントも見られる始末だった。
「毎年のようにG1を勝っているデムーロ騎手ですが、近年はどうにも大事なレースで出遅れが目立っている印象です。ファンの間でも、すでに悪い意味で定着してしまっていますし、もはや“悪癖”と言わざるを得ないかも。
大レースでの勝負強さは誰もが認めるところですし、あの出遅れさえなければ、もっともっと大きなレースを勝っていてもいいジョッキーなんですが……」(競馬記者)
実際に近年のG1で上位人気に騎乗したケースだけを振り返っても、2020年マイルCSのサリオス(2番人気、5着)、2021年ヴィクトリアマイルのテルツェット(3番人気、14着)、有馬記念のステラヴェローチェ(3番人気、4着)と絶好のチャンスで出遅れてしまい、不完全燃焼に終わっているデムーロ騎手。
特に、ユーバーレーベンのオークス、サークルオブライフの阪神ジュベナイルフィリーズとG1・2勝を挙げた昨年は「3番人気以内の馬に騎乗し、出遅れなければ勝利」という極端な結果が残っている。
「実は以前、福永祐一騎手がデムーロ騎手のスタートについて『苦手で、出遅れ率は30%』と話していたことがあります。なんでも過去にスタート直後に落馬した経験がトラウマになっているらしく『馬に体を預けることができなくなっている』とか。
福永騎手といえば自他ともに認めるデータ派ですし、出遅れ率30%もあながちアバウトなイメージでもなさそう。今後もデムーロ騎手の騎乗馬を応援する時は、いつも以上に『出遅れることもある』と覚悟した方がいいのかもしれません」(別の記者)
「ゲートの中で最初からイライラして、出遅れてしまいました。最初から脚が出ない感じで……。少しずつ出していきましたが、最後は反応がなかった」
レース後、そう敗因を語ったデムーロ騎手。ここ5年で2勝を挙げるなど得意にしていたオークスだが、同じくここ2年で2勝を挙げていたルメール騎手に3勝目を飾られてしまった。
どんな有力馬でもスタートで出遅れてしまっては、勝つことは難しい。福永騎手が語った「出遅れ率30%」は騎手として重大なハンデと言わざるを得ないが、それでも数々の栄光を勝ち取ってきたのがデムーロ騎手である。期待を裏切り続ける2歳女王の秋に逆襲はあるのか、このままライバルに三冠を許すわけにはいかない。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。