JRA 2週続いた横山武史騎手のリベンジ劇、2度あることは3度ある? 今週はキラーアビリティでエフフォーリアの“忘れ物”を獲りに行く
NHKマイルCから幕を開けた東京競馬場の5週連続G1開催もいよいよ終盤戦。29日には日本ダービーが行われる。
春のG1戦線も残り3戦となっている中、ここに来て大舞台で存在感を発揮しているのが、横山武史騎手だ。
昨年は皐月賞での初G1制覇を皮切りに、年間でG1を5勝するなど大ブレイクを果たした24歳。しかし、この春はレシステンシアで挑んだ高松宮記念で6着に敗れると、翌週の大阪杯は単勝1.5倍のエフフォーリアで9着と惨敗。桜花賞もナミュールで10着に敗れ、1番人気で3連敗を喫してしまった。
若き天才が味わった挫折。3月・4月はG1戦線で掲示板に載ることもできなかったが、ここに来てその嫌な流れが少しずつ変わってきている。
15日のヴィクトリアマイル(G1)では、レシステンシアとのコンビで3着と奮闘。本人は「馬の根性に助けられた」と語っているが、距離延長が不安視された同馬を馬券内に持ってきた手腕は称えられて然るべきだろう。
さらに先週のオークス(G1)でも、ナミュールで3着と2週連続の馬券圏内突入。両馬の共通点といえば、この春のG1戦線をともに戦ったパートナーであり、前走で人気を裏切ってしまったというところにある。
今週はキラーアビリティでエフフォーリアの“忘れ物”を獲りに行く
この悔しさをバネに、東京でリベンジを挑む横山武騎手がダービーで騎乗するのは、キラーアビリティ(牡3歳、栗東・斉藤崇史厩舎)だ。
横山武騎手の騎乗で暮れのホープフルSを制した2歳チャンプだが、皐月賞では4番人気で13着と大敗。年末からのぶっつけ挑戦という難しさもあったが、騎手は「ゲートがすべてです」と、かねてからの課題であったスタートの不安定さを敗因に挙げた。
それでも、今回は陣営のトーンが高い。調教助手が「皐月賞の時とは全然違う」と状態面に太鼓判を押せば、成長ぶりについても「肉体が強化されて締まってきた」とし、心身ともに充実していることを強調。逆襲に向けた準備を進めている。
そこに追い風となるのが、横山武騎手が見せる復調気配だ。「前走が春のG1戦」で「自身が騎乗して人気を裏切る敗戦」という点も、レシステンシアとナミュールと同じパターン。なおかつ馬主も共通のキャロットファームと、3週連続のリベンジ好走へ条件は整っている。
また、“リベンジ”と言えば、横山武騎手のこのレースに懸ける想いも忘れてはならない。
1年前は皐月賞馬・エフフォーリアと二冠に挑むも、シャフリヤールにハナ差惜敗。掴みかけた日本ダービーの戦後最年少優勝と、親子ダービー制覇の快挙が手からすり抜けた。
上述した通り、昨年は5つのG1タイトルを獲得した横山武騎手だが、年末のインタビューでは喜びよりもダービーの悔しさを語り、「今まで生きてきた中で断トツに悔しい」とも振り返った。その悔しさを晴らすためには、やはりダービーで勝つ以外にないだろう。
さらに、そのエフフォーリアもキャロットファームの持ち馬。2017年のレイデオロ以来、2度目のダービー制覇が目前に見えていた中での惜敗。クラブとしても、今年こそという想いは強いはずだ。
府中の長い直線で、今週も緑と赤の勝負服を身にまとった若き天才の躍動が見られるか。2歳王者と馬主、そして何より自身の悔しさを燃料に、横山武騎手が再び戦後最年少のダービー制覇に挑む。
(文=木場七也)
<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。