JRA川田将雅「悲願」のリーディング獲得へ正念場!? C.ルメール「乗り替わり」二冠が持つ意味…日本ダービー(G1)からの逆襲に現実味

C.ルメール騎手

 22日に東京競馬場で行われたオークス(G1)では、3番人気に支持されたスターズオンアースが勝利。桜花賞(G1)に続いての勝利で、史上16頭目となる牝馬クラシック二冠を達成した。

 スターズオンアース陣営にとっては最高の一日になったが、特に喜びもひとしおだったのが騎乗したC.ルメール騎手だ。昨年12月のチャレンジC(G3)で勝利して以来、JRA重賞では勝利から見放され続けていたが、ついに重賞連敗記録(取消含む)を30でストップすることに成功。

 ゴール直後には今までの鬱憤を晴らすように、大きな雄叫びを上げながら何度もガッツポーズを見せたルメール騎手。約半年ぶりの重賞勝利をクラシックの大舞台で飾り、最高の形で復活を印象付けた。

川田将雅騎手

 一方で悔しい思いをしたのが川田将雅騎手であろう。桜花賞では7番人気のスターズオンアースに騎乗し、テン乗りとは思えない見事な騎乗で勝利へ導いた。当然オークスでもスターズオンアースに騎乗すると思われたが、デビュー以来コンビを組み、母パールコードへの思い入れのあるアートハウスへの騎乗を優先。桜花賞馬のまさかの乗り替わりは、最大の話題となった。

「川田将雅が選んだ馬」として期待を背負い、2番人気に支持されたアートハウスであったが、結果は7着に惨敗。後方からスターズオンアースの勝利を見届けた川田騎手の胸中は複雑だったに違いない。

 現在はトップジョッキーとして君臨する川田騎手であるが、実は同一馬で複数回クラシックを制覇した経験は未だに無い。スターズオンアースとの出会いは自身初の二冠達成、そして夢の三冠制覇を目指す大きなチャンスだったといえる。自ら下した乗り替わりの決断とはいえ、「もしスターズオンアースに乗っていれば…」と思わずにはいられないだろう。

C.ルメール「乗り替わり」二冠が持つ意味

 スターズオンアースの「乗り替わり」を巡って明暗がハッキリと分かれた川田騎手とルメール騎手、今回の一件は今後のリーディング争いにも影響を及ぼしそうだ。

 川田騎手は現時点で67勝を挙げ、2位以下を大きく突き放す形でリーディング首位を独走中。2019年から2021年にかけて、3年連続でリーディング2位と悔しい思いをしている川田騎手だけに、リーディングジョッキーの座はまさに悲願。最も欲するタイトルの獲得に向けて、ここまでは順風満帆のシーズンを送っている。

 その川田騎手の悲願を阻む形で、2017年から5年連続でリーディング首位に輝いているのがルメール騎手である。

 しかし、今年は先述の重賞戦線での不振や、新型コロナウイルス感染に伴う隔離期間などの影響も相まって、現時点で48勝となっている。リーディングも4位に留まっており、ライバルの川田騎手とは大きく差を開けられてしまっている。

 今回のオークス勝利でルメール騎手が不振の底を脱したとすれば、リーディング争いに再び浮上してくることも十分に考えられる。それに加えて、今回の乗り替わりでの勝利がルメール騎手の「逆襲」を後押しする大きな理由が存在する。

 川田騎手とルメール騎手の今年の騎乗成績を「生産者」に注目して比べると、両者の間に大きな違いが浮かび上がる。以下は2022年の両者の生産者別の騎乗成績である。

C.ルメール騎手
ノーザンファーム 26-22-14-51/113
社台ファーム 4-5-3-11/23

川田将雅騎手
ノーザンファーム 12-9-17-27/65
社台ファーム 10-10-9-18/47

 このように、ルメール騎手はノーザンファームに重用される一方で、社台ファームの生産馬への騎乗は多くはない。一方の川田騎手は社台ファームの生産馬への騎乗がルメール騎手の約2倍であり、重用されていることが数字に表れている。

 スターズオンアースは社台ファームの生産馬であり、川田騎手は懇意の陣営の依頼を不意にした形となる。逆に乗り替わりの末にスターズオンアースをオークス制覇に導いたルメール騎手に対する社台ファーム側からの信頼は高まったに違いない。

 これを機に社台ファームの有力馬への騎乗機会が川田騎手からルメール騎手へ流れることとなれば、リーディング争いに与える影響も大きいはずだ。

 社台ファーム・ノーザンファームという生産界の2大巨頭からの信頼を一手に担う形となれば、ルメール騎手の大逆転でのリーディング獲得も現実味を帯びてくる。ここまでは低調なシーズンを送ってきたルメール騎手だが、今年も川田騎手にとっては強力なライバルとなるはずだ。

 今回のスターズオンアースを巡る一件が引き金となり、リーディング争いの勢力図が一変することになるのか。川田騎手とルメール騎手、2人のライバルの今後の動向に目が離せない。

(文=エビせんべい佐藤)

<著者プロフィール>

 98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。

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