JRA桜花賞3着馬の50キロに「反則」の声、夏競馬の名物「3歳馬無双」が函館スプリントS(G3)で猛威
日本ダービー(G1)が終わり、今月4日から2歳新馬戦のスタートと同時に、古馬戦に3歳勢の参戦も始まった。
2019年に降級制度が廃止されて以降、「夏は3歳馬を狙え!」が新たな格言として浸透しつつある昨今。先週末に行われた平地の3歳馬・古馬混合戦を振り返ってみても、全25レースのうち3歳馬が14勝と他を圧倒していた。
もっと言えば、その25レースの中には3歳馬の参戦がなかったものも含まれており、3歳馬が出走したレースに絞ると18戦で14勝という驚異的な成績。さらに内訳を見ると、1勝クラスで10勝の固め打ち、2勝クラスで残りの4勝と、下級条件であればあるほど3歳馬の強さが際立つ結果となっている。
それもそのはず、この時期の1勝クラスとなると、初勝利を挙げてから1年以上も勝ち上がれていない馬が留まっているような状態。そこにフレッシュで伸びしろのある3歳馬が混ざり、それでいて斤量面でも恵まれるとなれば、4歳以上の先輩たちにとっては厳しい戦いとなるのも当然だ。
ちなみにそれは馬券購入者も同じ。先週14勝を挙げた3歳馬のうち9頭は1番人気で、なんと14頭中13頭が1~3番人気だった。例外の1頭も4番人気ということで、平場戦の波乱を狙う穴党にとっても3歳馬は強大な壁となっている。
そしてこの「3歳馬の取捨」は今後、重賞でも向き合って行かなければならない重要なテーマとなる。
先週の鳴尾記念(G3)には3歳馬の出走がなかったが、安田記念(G1)ではセリフォスがあわや馬券内突入の4着と好走。1年前はシュネルマイスターが3着に入ったように、やはり4歳以上の58キロに対して3歳馬の54キロという負担重量の違いは、一線級の戦いの中でも大きな影響を及ぼす。
桜花賞3着馬の50キロに「反則」の声
そんな中で迎える今週末、函館競馬場で行われる函館スプリントS(G3)において、「3歳馬の斤量」が早くも大きな話題となっている。
『netkeiba.com』で公開されている予想オッズによると、1番人気濃厚と目されているのが、前走の桜花賞(G1)3着から挑むナムラクレア。同馬は3歳馬の4キロ減だけでなく、牝馬の2キロ減も加わるため、負担重量は登録馬の中で最軽量の50キロ。トップハンデのライトオンキューと比べて8キロも恵まれているのだ。
ナムラクレアといえば、持ち前のスピードを武器にフェニックス賞(OP)と小倉2歳S(G3)を連勝。2歳戦とはいえスプリント重賞を勝利している実力馬であり、この春もフィリーズレビュー(G2)で2着、さらに距離を延ばしたG1戦でも3着と、牝馬戦線で常に上位の能力を見せてきた。
一般的に斤量は短距離・長距離の極端な条件になるほど影響が大きくなると言われており、短距離戦で言えば負担重量が軽ければ軽いほどスタートダッシュが利きやすくなるため、それが他馬とのアドバンテージになると考えられている。その上でこれほどの実績馬が50キロで出てくるとあって、ネットの掲示板やSNSなどでは「反則では…?」という声も上がった。
思い返せば昨年のサマースプリントシリーズでも、アイビスサマーダッシュ(G3)ではオールアットワンスが、北九州記念(G3)ではヨカヨカが、キーンランドC(G3)ではレイハリアがそれぞれ重賞を初制覇。共通点は「負担重量51キロの3歳牝馬」だったというところにある。
函館スプリントSに関しては2017年を最後に牝馬の優勝がないが、その時の勝者はジューヌエコールで負担重量50キロの3歳牝馬だった。ナムラクレアはその再現を狙うことになる。
さらにこの「ナムラクレア(50キロ)」の陰で、ファルコンS(G3)を制している3歳牡馬のプルパレイが52キロで登場してくる点も見逃せない。2頭の3歳重賞ウィナーが、古馬の強豪をまとめて飲み込むシーンがあっても驚きはない。
夏の“3歳馬無双”は重賞戦線でも吹き荒れるのか、はたまた先輩たちが意地を見せるのか。まずは初戦に登場するナムラクレアとプルパレイから目が離せない。
(文=木場七也)
<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。