JRAアーモンドアイら歴史的名馬の「殿堂入り」を阻む父娘の存在!? “当確”からまさかの選外…顕彰馬投票「選定馬なし」が呼んだ波紋
数々の名馬の選出を阻む「門番」父娘の存在とは…
7日、2022年度の顕彰馬選定の記者投票の結果がJRAから発表され、今年の結果は「選定馬なし」だった。この結果自体は決して珍しいものではなく、直近3年でも2年で同様の結果になっている。
それでも今年の選定結果は、各所で大きな波紋を呼ぶこととなった。その理由が今年から選考対象となったアーモンドアイの存在である。アーモンドアイは現役時代に牝馬3冠、そして史上最多となるG1・9勝を挙げた歴史的名牝であり、その評価は顕彰馬になって当然のものだ。
当然ながら「一発選出」が確実と思われていたが、今年の結果はまさかの「選定馬なし」。アーモンドアイはキングカメハメハと並び選定対象馬中最多の144票を集めたが、選出に必要な投票記者数の3/4にあたる152票にあと一歩届かず、顕彰馬に選定されることは叶わなかった。
投票記者の75%もの投票を集めることが必要になる顕彰馬投票。現在は記者1人あたりの投票可能数が2頭から4頭へと引き上げられたものの、依然として選出へのハードルは高いものとなっている。
この高いハードルに跳ね返されてきたのはアーモンドアイだけではない。オルフェーヴルやジェンティルドンナのように一発選出される馬も時にはいるが、ロードカナロアは4年、エルコンドルパサーに関しては14年と、名だたる傑物でも選出に長い期間を要している。
このように厳しい基準で行われている顕彰馬選定。その選出を更に難しいものにしているのが、選出には届かないものの例年多くの票を獲得している「門番」ともいえる存在だ。その最たる例こそがスペシャルウィークである。
スペシャルウィークは選定対象となった2001年以降、毎年のように2位~3位、得票率にして20%~40%程度の票数を安定して獲得。かつては記者の投票可能数が2頭であったことを考えれば、スペシャルウィークの存在が数々の名馬の選出を阻む大きなハードルであったといえる。
しかしスペシャルウィークの獲得票数が15%程度に大きく落ち込んだのが2008年と2011年。この年はそれぞれディープインパクト、ウオッカが初めて選定対象となった年であり、この2頭は圧倒的な票数を獲得して「一発選出」を果たしている。スペシャルウィークの獲得票数が激減したのも、この2頭に票が流れたためである。
この出来事を見る限り、スペシャルウィーク以上であると投票記者を唸らせて票を奪うことでディープインパクト、ウオッカは顕彰馬への道を切り開いたといえるだろう。スペシャルウィークの存在はまさしく顕彰馬選定における「門番」の機能を果たしていた。
そのスペシャルウィークは最後まで自身が選出されることはなく、遂に2020年をもって選定対象から外れることに。しかし今度はその娘であるブエナビスタが、新たな「門番」として近年は数々の名馬に立ちはだかっている。
ブエナビスタは選考対象となった2013年から例年50%前後、多い年には71%の票を集めたものの顕彰馬にはあと一歩届かず。今年も45.0%の得票率をマークしており、これはアーモンドアイ、キングカメハメハに次ぐ3位にあたる。
今年のアーモンドアイの顕彰馬への選出に必要な票数はあと「8票」であり、他の馬に投じられた票を僅かでも獲得できていれば選出は果たせたはずである。この結果はブエナビスタが「門番」として多くの票を集めていたことも影響しているはずだ。
来年はコントレイルやグランアレグリアといった一時代を築いた名馬も選考対象に加わり、更に票が分散することも予想される顕彰馬選定。果たしてアーモンドアイは「門番」であるブエナビスタから票を奪い、顕彰馬の称号を手にすることができるのか。来年こそは新たな顕彰馬が生まれることを、ファンとしては期待したいところである。
(文=エビせんべい佐藤)
<著者プロフィール>
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。