JRA 宝塚記念(G1)「2番手で…」あの陣営から不気味なコメント…タイトルホルダーを悩ませる“くせ者”の存在
26日、阪神競馬場では上半期の総決算となる大一番・宝塚記念(G1)が行われる。
G1馬が5頭も参戦を表明している春のグランプリ。その中で栄えあるファン投票1位に輝いたのが、タイトルホルダー(牡4歳、美浦・栗田徹厩舎)だ。
前走の天皇賞・春(G1)では、逃げて後続に7馬身の差をつける圧勝。菊花賞(G1)に続くG1タイトルを手中に収めた。
キャリア5勝のすべてを通過順「1-1-1-1」で挙げている逃げ馬だが、今回は強力なライバルがいる。逃げの戦法で才能が開花したパンサラッサ(牡5歳、栗東・矢作芳人厩舎)だ。
昨秋にオクトーバーS(L)を逃げ切って勝つと、続く福島記念(G3)も逃げて後続に0秒6差をつける快勝。初めての重賞勝ちを果たす。
暮れの有馬記念(G1)では13着と大敗を喫するも、年明け初戦の中山記念(G2)も逃げ切り、前走はドバイターフ(G1)で前年覇者のロードノースと同着優勝。国内より先に海外のG1タイトルを掴んでいる。
“ハナ争い”はさほど激化しないというのが大方の見方
当然ながらレースで“逃げ”の戦法を取れるのは1頭だけ。現役屈指の強力な逃げ馬の激突に大きな注目が集まるが、この“ハナ争い”はさほど激化しないというのが大方の見方だ。
というのも、1800~2000mのレースで序盤から飛ばして結果を残してきたパンサラッサに対し、タイトルホルダーは3000~3200mのレースでハナを切ってペースを作ってきた馬。両者は有馬記念で対戦があり、その時もパンサラッサが逃げてタイトルホルダーは2番手に収まっている。
両陣営のコメントも対照的で、パンサラッサの矢作師は「行くしかない。どんなに競られても、こっちは挑戦者ですから。とにかく自分の競馬をするということに徹したい」とし、吉田豊騎手への指示について聞かれると、「自分の競馬に徹してくれ、それでバテたら仕方ない」とコメント。玉砕覚悟で突き進む意志を示す。
一方、タイトルホルダーの栗田師は「逃げて勝っていますが、絶対に逃げなくてはいけないという馬ではない。この馬のリズムが逃げという形になっているだけ」とし、“逃げ馬”ではないことを強調。作戦についても「ジョッキーが上手くペース、リズムを掴んで乗ってくれている。ジョッキーにおまかせしています」と、位置取りよりもリズム重視で臨むとしている。
このコメントからも、タイトルホルダーが無理にパンサラッサに絡んでハナを奪いに行くというのはイメージがしづらい。とはいえ、ファン投票1位という期待を背に何もできずに不発で終わるわけにもいかず、飛ばして逃げるパンサラッサを見ながら2番手でリズムよく進めていくというプランが理想となりそうだ。
「パンサラッサが行くだろうから、その2番手なら」
しかし、どうやらその理想を叶えるのも容易ではなさそう。タイトルホルダーにとって、パンサラッサよりも目の上のたんこぶとなりそうなのがアフリカンゴールド(セ7歳、栗東・西園正都厩舎)である。
昨冬から前に付ける競馬で新味を見出すと、2月の京都記念(G2)では単勝51.5倍の12番人気で逃げ切り勝ち。7歳にして重賞初制覇を成し遂げた。
前走の大阪杯(G1)はジャックドールに逃げを許すも、2番手で進めて7着。平田助手は「こちらが思っている以上に止まらなかった」と振り返り、自分の形にならなかった中で見せた粘りに充実ぶりを感じ取っている。
西園師は宝塚記念という大舞台でも「自分の競馬ができれば」と前付けからの一発に色気を見せており、「パンサラッサが行くだろうから、その2番手なら」と具体的な作戦にも言及。速い逃げ馬を行かせて、その後ろでマイペースに運びたい。タイトルホルダーが望む形と完全に被っているのだ。
道中のリズムを重視したいタイトルホルダーにとって、ハナを譲ってもなお競りかけてくる存在がいるというのは、当然ながら歓迎できる材料ではない。
枠順も3枠6番という内寄りの枠を手に入れたが、アフリカンゴールドはさらに内の1枠2番。6枠11番からパンサラッサが飛び出していくのを尻目に、その後ろの2番手を確保するのはどの馬になるのか。スタートから1コーナーまでの525mの攻防が、このドリームレースの大きなカギを握っている。
(文=木場七也)
<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。