JRA宝塚記念(G1)「サウスポー」と侮るなかれ!? 陣営が掴んだ右回りへの確かな手応え…コントレイル世代の「ガラスのエース」が悲願のG1タイトルへ!
26日、阪神競馬場で行われる宝塚記念(G1)。タイトルホルダー、エフフォーリアの2頭の4歳馬が人気を集めると目されるが、その2頭を脅かす存在として5歳世代のディープボンド、デアリングタクト、パンサラッサといった面々にも注目が集まっている。
一方で、コントレイル世代の中でも指折りの実力を誇る馬も参戦するのだが、不思議と世間からはあまりスポットを浴びていない。その馬こそがオーソリティ(牡5歳、美浦・木村哲也厩舎)である。
オーソリティは3歳、4歳時にそれぞれ怪我による休養を経験したが、昨年に復帰初戦のアルゼンチン共和国杯(G2)をトップハンデで圧勝すると、続くジャパンC(G1)ではコントレイルの2着に好走。今春は海外遠征を敢行しネオムターフC(G3)で勝利、ドバイSC(G1)でも3着に好走しており、実績を考えれば古馬中距離路線でもトップレベルの1頭といえる。
コントレイルの世代のかつての「ガラスのエース」は、今まさに充実期を迎えていると言っていいだろう。しかし今回の宝塚記念では世間から伏兵の一角とみられている様子で、『netkeiba.com』の想定オッズでも8番人気に留まっている。
この理由として考えられるのは右回りコースに対する懸念である。
オーソリティが過去に勝利した重賞4レースは全て左回り。右回りのG1に挑んだ一昨年の有馬記念(G1)、昨年の天皇賞・春(G1)ではいずれも2桁着順に大敗しており、この2戦で典型的な「サウスポー」の印象がファンに定着してしまったことが、今回評価を下げている要因であろう。
だが、本当にオーソリティは右回りが苦手なのだろうか。
「サウスポー」と侮るなかれ!?
ここでオーソリティの過去の戦歴を枠順に注目してみると、一概に「サウスポー」とは言えない事実が浮かび上がる。
過去にオーソリティが挑んだ右回りの重賞4戦はいずれも2桁馬番の外目の枠であった。天皇賞・春では17頭立ての大外17番、比較的内枠が有利と言われえる有馬記念では12番枠と、特にこの2戦は枠順に恵まれなかった面がある。
一方でオーソリティは函館の新馬戦、続く中山の芙蓉Sと2歳時には右回りでデビュー2連勝を遂げている。この時の馬番はそれぞれ6番、4番であり、小頭数であったことも考えれば枠順の不利は無かったといえるだろう。こうした戦績を踏まえれば、オーソリティは決して右回りが苦手なわけでは無いかもしれない。
この点について、木村哲也調教師が共同会見で興味深いコメントを残している。
木村師によると中東遠征に向けた国内最終追い切りを諸事情で右回りのウッドコースで行ったそうだが、その際のオーソリティの動きが抜群であったとのこと。このエピソードを挙げた上で師は「右回りだからネガティブな気持ちになることはあまりないですよね」と語っている。
過去の戦績を見れば良績が左回りに集中しているのは一目瞭然。それでも今回の宝塚記念へ出走してきたのは、こうした陣営の手応えもあってのことだろう。G1での2度の大敗ばかりがフォーカスされるが、これだけで「右回りは走らない」と決めつけるのは早計ではないだろうか。
加えて気になるのが、オーソリティが1枠1番の最内枠に入った点だ。
今年の宝塚記念は京都競馬場改修の影響で開催2週目での施行であり、馬場の痛みも例年と比べれば少ない。先週の阪神のレースを見る限り芝のコンディションは良好であり、大きな降雨などがなければ今週も引き続き内枠・先行が有利な馬場が想定される。先行力を持ち合わせるオーソリティにとって1枠1番は、今の阪神では絶好枠と言えるだろう。
「サウスポー」のイメージから伏兵評価に留まっているオーソリティだが、その実力・実績は上位人気の馬たちにも引けを取らない。コントレイル世代の「ガラスのエース」はグランプリの舞台で、念願のG1タイトルを手にすることができるのか。右回りでも侮れない、オーソリティの走りに期待したい。
(文=エビせんべい佐藤)
<著者プロフィール>
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。