JRA M.デムーロ「僕の中で一番強い」タイトルホルダーが受け継ぐ最強馬のバトン…キタサンブラックが一度も勝てなかったドゥラメンテ、「夢の続き」は父から子へ

タイトルホルダー 撮影:Ruriko.I

 阪神競馬場で先週末に開催された宝塚記念(G1)は、直線2番手から楽に抜け出したタイトルホルダーが優勝。春の最強馬を決めるグランプリで圧巻の走りを披露した。

 前走の天皇賞・春(G1)を7馬身という大差で圧勝し、ファン投票でも1位に支持されながら、最終的な人気は同世代のエフフォーリアに1番人気を奪われて2番人気に甘んじた。

 この背景にはライバルに直接対決で3戦全敗を喫していた分の悪さも影響していただろう。エフフォーリアが前走の大阪杯(G1)で断然人気を裏切ったとはいえ、ブリンカーを着用したことで本来の走りを取り戻したと報じられたことも、復活を期待するファンの支持を集めたか。

 両馬にとって4度目の対決となった宝塚記念で、タイトルホルダーは天敵と呼べる相手に初めて先着。これで名実ともに最強馬として名乗りを上げた訳だが、完全無欠にも映った完勝は多くのファンに“王者交代”を印象付けたに違いない。

 今回の勝利で陣営は凱旋門賞(仏G1)の挑戦を明言。既にこの世界最高峰といわれる舞台への参戦を表明しているダービー馬ドウデュースとの対決も現実味を帯びてきた。主戦を任される武豊騎手にとっても同じ日本馬から最大の強敵が現れることとなった。

 その一方で、タイトルホルダーの父ドゥラメンテもまた、現役時代に凱旋門賞への挑戦を渇望された馬だったことを覚えているだろうか。

M.デムーロ騎手

 2015年の春クラシックで二冠を達成した名馬は、主戦のM.デムーロ騎手から「僕がこれまで乗った馬の中で一番強い」とも評されたほど。後の7冠馬キタサンブラックが一度も勝てなかった相手としても知られている大物だ。

 しかし、2016年の宝塚記念に出走して単勝1.9倍の圧倒的な支持を集めたものの、8番人気の伏兵マリアライトの強襲の前にまさかの2着。その後、球節周辺の腱や靭帯の損傷が判明した結果、競走能力喪失の診断が下されたことにより現役引退を強いられた。2017年から種牡馬として供用が開始され、初年度の産駒として誕生したのがタイトルホルダーだった。

 偉大な父が引退を強いられるキッカケとなったレースを代表産駒であるタイトルホルダーが優勝したことは、それだけでも非常に感慨深いことなのだが父子の成績を振り返ってみたところ、意外な共通点があることに気付かされる。以下は、現段階でそれぞれの優勝したG1である。

皐月賞    ドゥラメンテ(タイトルホルダー2着)
日本ダービー ドゥラメンテ(タイトルホルダー6着)
菊花賞    タイトルホルダー(ドゥラメンテ不出走)
天皇賞・春  タイトルホルダー(ドゥラメンテ不出走)
宝塚記念   タイトルホルダー(ドゥラメンテ2着→負傷引退)

「夢の続き」は父から子へ

 春二冠を制して三冠を期待されたものの、ダービー後に判明した骨折のため、菊花賞(G1)への出走は叶わなかったドゥラメンテに対し、春二冠で手に入れることの出来なかったG1タイトルを菊花賞で手に入れたのがタイトルホルダーである。

 父が不覚を取った宝塚記念でタイトルホルダーがリベンジを果たしたこともまた、偶然とはいえ不思議な縁だろう。タラレバを言っても意味はないが、2頭の成績を合わせるとなかなかの名馬が誕生するという訳だ。

 ドゥラメンテは昨年8月31日に急性大腸炎でこの世を去り、まだまだこれからという9歳での早世を惜しむ声も止まなかった。

 そして、父が立てなかった凱旋門賞に父からのバトンを受け取ったタイトルホルダーが挑戦する。父子2代で夢の続きが見られる秋を血のロマンといわずにいられようか。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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