JRA福永祐一「正直敗因が分かりません」からの汚名返上! 池添謙一の降板でガッカリしたファンに意地見せた…武豊以来の2勝目に「またここからです」
タイトルホルダーが圧勝劇を演じた宝塚記念(G1)が行われた26日、上半期を締めくくったグランプリレースの2時間ほど前に復活を遂げたクラシック候補がいた。
それは8Rの城崎特別(3歳上1勝クラス)に出走し、見事な勝利を挙げたアルナシーム(牡3、栗東・橋口慎介厩舎)のことである。
昨年7月函館の2歳新馬で武豊騎手を背にデビュー勝ち。2戦目の東京スポーツ杯2歳S(G2)では道中で折り合いを欠いたこともあって6着に敗れたが、池添謙一騎手に乗り替わった朝日杯FS(G1)でドウデュースの4着に好走した。
敗れた相手は後のダービー馬。5着馬が皐月賞(G1)を制したジオグリフだったことを思えば、アルナシームの能力の高さを証明した一戦だったといえる。
だが、そんな素質馬の活躍を妨げているのは、あまりにも強過ぎる前進気勢だ。前述した東スポ杯2歳Sでは最後方からスタートしたものの、武豊騎手ですら抑えることが出来ずに最終コーナーで早々と先頭に立った結果、直線半ばで力尽きている。
年明け初戦のつばき賞(1勝クラス)では福永祐一騎手へと乗り替わったが、折り合いに苦労して引っ張っている内に、超スローの逃げに持ち込んだC.ルメール騎手とテンダンスのコンビの前に脚を余すような格好で敗戦。賞金的にクラシックを目指すにはトライアルで権利を取るしか選択肢がなくなってしまった。
しかし、4番人気で挑んだスプリングS(G2)を7着に敗れる誤算。これを機に陣営は立て直しを余儀なくされる。
「ゲートはスムーズだったし、折り合いもぴったりで完璧だったんですけどね。あとは、はじけるだけだと満を持して追い出したけど伸びませんでした」
レース後、福永騎手がそう振り返ったように敗因を特定できないままの敗戦に、一部のファンからは池添騎手の再登板を望む声も噴出。宝塚記念当日の阪神には池添騎手がいただけに、福永騎手の継続騎乗に疑問を呈する意見が少なからずあったのも止むを得なかったか。
とはいえ、武豊騎手以来の2勝目となった城崎特別での福永騎手の騎乗は文句なしの内容だったことも確かだ。
「正直敗因が分かりません」からの汚名返上!
「完勝でした。競馬も上手に立ち回りました。またここからです」
福永騎手のコメントの通り、レースでは好スタートを決めると好位でピタリと折り合って、これまで見せてきたような手綱を引っ張るシーンもなし。手応え十分に最後の直線を迎えると先頭で粘る逃げ馬を楽に交わし、外から猛追してきた2着馬も軽くいなしてのゴール。厩舎の努力もあっただろうが福永騎手の手綱捌きもお見事だった。
父が距離に不安のあるモーリスということもあり、血統的に残る一冠の菊花賞(G1)向きとはいえないものの、近親にはアルアインやシャフリヤールのいる良血馬だ。このまま順調に勝ち進むようなら、秋のG1戦線で台風の目になりそうな実力馬の復活は非常に楽しみである。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。