JRAスミヨン、デムーロ、ルメールが「格の違い」を証明…クビになった中堅騎手が味わった屈辱、あの名牝の全弟がデビュー

ラッキーライラック

 G1・4勝を挙げた名牝の姉に続けるか。

 デビュー前から評判の期待馬シリンガバルガリス(牡2、栗東・松永幹夫厩舎)が、10日に行われる日曜小倉の2歳新馬(芝1800m)でデビューを予定している。

 馬名の由来がライラックの学名であることからも察しがつくように、姉は2019、20年のエリザベス女王杯(G1)、20年の大阪杯(G1)などを制したラッキーライラック。父オルフェーヴルということもあり全弟にあたる。

 馬体重も480キロ前後と恵まれ、ここまでの乗り込みも順調。芝1800mを使うからには、将来的にクラシックを見据えている可能性が高い。今やトップジョッキーの一人に名を連ねるまで成長した松山弘平騎手としても、期待の大きな1頭となるだろう。

石橋脩騎手

 その一方、同世代に芝G1・9勝を挙げたアーモンドアイがいる“不運”もあったラッキーライラックだが、デビューから主戦を任された石橋脩騎手もまた、降板による“鞍上強化”を経験した。

 チューリップ賞(G2)まで阪神JF(G1)を含む4戦無敗の快進撃を見せながら、クラシックでは牝馬三冠を制したアーモンドアイの前に完敗。翌年の府中牝馬S(G2)まで重賞で7連敗を喫する不振続き。秋華賞(G1)こそ石橋騎手の落馬により北村友一騎手が手綱を取ったものの、一部のファンから乗り替わり待望論も出始める。

クビになった石橋騎手が味わった屈辱…

 そんな声に応えるが如く陣営は石橋騎手の降板を決断。乗り替わったC.スミヨン騎手が騎乗した19年のエリザベス女王杯は、内から鋭い末脚を披露して見事な勝利を収めたのである。

 先行して直線で差される競馬を続けていた石橋騎手にとっても、世界的な名手に差し切り勝ちを決められたことは皮肉な結果だっただろう。

 力の違いで2歳G1を制したラッキーライラックだが、外国人騎手へと鞍上が強化されたこの勝利以降も、M.デムーロ騎手やC.ルメール騎手の手によってG1タイトルを2つ上乗せすることに成功している。結果的にも乗り替わりが大成功だったと外国人騎手によって証明された格好だ。

 そしてこれはラッキーライラックの弟シリンガバルガリスを任される松山騎手にとっても他人事ではない。過去には松山騎手も自身の騎乗でG1勝利を決めながら、降板の憂き目に遭ったことがあるからだ。

 振り返れば2017年の春クラシックで松山騎手はアルアインとコンビを組み、毎日杯(G3)と皐月賞(G1)を連勝したものの、日本ダービー(G1)の敗戦をきっかけに乗り替わる屈辱を味わってもいる。

 とはいえ、その後は実力をつけてデアリングタクトで無敗の牝馬三冠を達成するまでに成長した。今の松山騎手なら外国人騎手に引けを取らないはず。期待のコンビがどのような走りを披露してくれるのか。日曜の小倉を楽しみに待ちたい。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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