JRA天皇賞・秋(G1)「超ハイレベル」3歳ジオグリフ&イクイノックスVS古馬エフフォーリア&ジャックドール! 頂上決戦に「あの馬」も参戦か

ジオグリフ

 14日、今春の皐月賞(G1)を制したジオグリフ(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)が、10月30日に東京競馬場で行われる天皇賞・秋(G1)を目指していることがわかった。

 昨夏の札幌2歳S(G3)で、後の京都新聞杯(G2)の勝ち馬アスクワイルドモアを破って重賞初制覇。朝日杯フューチュリティS(G1)、共同通信杯(G3)と敗戦を重ねたが、福永祐一騎手と新コンビを結成した皐月賞を制し、一躍世代の中心に躍り出た。

 だが、二冠の権利を持って挑んだ日本ダービーでは、最後の直線で伸びきれずに7着。レース後、福永騎手が「距離は道中のロスがなければこなせると思う」と語っていた通り、2400mは若干長かった印象。皐月賞を制した2000mになれば、能力全開が期待できるはずだ。

 また、同厩で皐月賞・日本ダービー(G1)で共に2着だったイクイノックス(牡3歳)も天皇賞・秋へ向かうことがすでに発表されており、3歳牡馬の大物2頭が古馬に挑むことになる。

 昨秋の東京スポーツ杯2歳S(G2)を上がり3ハロン32.9秒という異次元の末脚で完勝。朝日杯FSを勝ったドウデュース、ホープフルS(G1)を勝ったキラーアビリティら2歳王者を差し置いて世代No.1の評価を集めていた。

 しかし、勝てば歴代最長となる休み明けで挑んだ皐月賞では、ゴール前で一度は抜け出したもののジオグリフの強襲に遭って2着。万全を期した日本ダービーでも、上がり最速の末脚を繰り出したが、ドウデュースを捉えることができなかった。

 だがレース後、主戦のC.ルメール騎手が「18番枠もあった」と嘆いた通り、春二冠は共に大外枠からのスタートと運にも見放された。実力は誰もが認めているだけに、古馬を相手に春の鬱憤を晴らしたいところだ。

エフフォーリア 撮影:Ruriko.I

 3歳2強の参戦が注目される今年の天皇賞・秋だが、迎え撃つ古馬の大将格エフフォーリア(牡4歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)にとっては、絶対に負けられない一戦だ。

 昨年は皐月賞、天皇賞・秋、有馬記念(G1)を制して年度代表馬にも輝いたエフフォーリア。グランアレグリアやクロノジェネシス、ラヴズオンリーユーなど多くの名馬が引退して迎えた今シーズンだけに、断然の主役だったことは間違いないだろう。

 しかし、始動戦として迎えた大阪杯(G1)では、中団やや後方から伸びを欠いて、まさかの9着。単勝1.5倍という圧倒的な支持を裏切ってしまうと共に、キャリア初の惨敗を喫してしまった。さらに続く宝塚記念(G1)でも、同じように本来の力を発揮できずに6着。ファン投票でも同期の菊花賞馬タイトルホルダーに後れを取るなど、完全に主役の座を奪われてしまった印象だ。

 春の敗因を挙げるなら、有馬記念後に一頓挫あって調整が遅れたことが大きい。陣営も懸命な調整を行ったが、主戦の横山武史騎手からは景気のいいコメントは聞かれなかった。また、キャリア初となった関西圏への輸送も微妙に調子を狂わせたのかもしれない。

 その点、十分な間隔のある今回の天皇賞・秋は実績のある関東のレースであり、昨年コントレイルやグランアレグリアを破った舞台。巻き返しの大きなチャンスであると同時に、エフフォーリアにとっては本当に言い訳の利かない一戦だ。現役最強馬は終わったのか、それとも――。秋は本当に負けられない戦いになる。

 次に注目しておきたいのが、2000mのスペシャリスト・ジャックドール(牡4歳、栗東・藤岡健一厩舎)だ。

 昨年9月から怒涛の5連勝。金鯱賞(G2)でレイパパレやアカイイトといったG1馬を相手に完勝したことで「超新星」として大阪杯を迎えたのが、ジャックドールだった。その大阪杯では初のG1挑戦だったものの、エフフォーリアに次ぐ2番人気に。しかし、レースでは果敢にハナを切ったものの、2番手アフリカンゴールドらが楽に逃してくれなかったこともあって、最後は5着に敗れた。

 その後は、早めに休養に入って8月の札幌記念(G2)での復帰が予定されているジャックドール。デビュー以来、一貫して芝2000mを使われているように、順調にいけば秋の最大目標は天皇賞・秋になるはずだ。

 大阪杯よりもメンバー強化が予想されるが、その分、人気が下がることが濃厚。マイペースで運びたい逃げ馬だけに、マークが薄くなるのは歓迎だろう。2000mの古馬G1は春の大阪杯と秋の天皇賞のみ。スペシャリストとして、数少ないチャンスを逃すわけにはいかない。

シャフリヤール 競馬つらつらより

 動向がまだ不鮮明だが、昨年のダービー馬シャフリヤール(牡4歳、栗東・藤原英昭厩舎)にも触れないわけにはいかないだろう。

 昨年、向かうところ敵なしだったエフフォーリアが唯一後れを取ったのが、シャフリヤールとの一騎打ちとなった日本ダービーだった。その後は、神戸新聞杯(G2)で不良馬場に苦しんだものの、ジャパンCではコントレイル、オーソリティに続く3着と世代代表としての力を見せている。

 そんなダービー馬が進化を示したのが、今春のドバイシーマクラシック(G1)だ。海外の強豪だけでなく、ジャパンCで先着を許したオーソリティや昨年のオークス馬ユーバーレーベンなど、日本からもトップホースが参戦していたが、しっかりと接戦を勝ち切って2つ目のビッグタイトルを手にしている。

 秋のポイントは、やはりプリンスオブウェールズ(英G1)を使ったことのダメージだろう。慣れない欧州の深い馬場に苦戦しただけに、じっくりと休養する可能性もある。仮に天皇賞・秋に出走すれば、間違いなく優勝候補の一角となるだけに、その動向が注目されている。

 他にも宝塚記念で2着したヒシイグアスや、大阪杯の覇者ポタジェ、中山記念(G2)を逃げ切ったパンサラッサ、3歳屈指のサウスポー・ダノンベルーガなども当然、秋の天皇賞は選択肢に入っているはずだ。

 昨年はエフフォーリアとコントレイルが初対戦したように、例年「現役No.1」を決める戦いとして定着している天皇賞・秋。今年もハイレベルな熱いレースになりそうだ。

(文=大村克之)

<著者プロフィール>
 稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。

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