JRA「最強メンバー」集まる天皇賞・秋に残念なお知らせ、グランアレグリア陣営を悩ませた適距離問題と「ルメール不足」の既視感

シュネルマイスター 撮影:Ruriko.I

 安田記念(G1)で2着したシュネルマイスター(牡4、美浦・手塚貴久厩舎)は、秋のローテーションにスプリンターズS(G1)からマイルCS(G1)に向かうプランを視野に入れているようだ。14日、本馬を所有するサンデーサラブレッドクラブが発表したことで分かった。

 秋の始動戦にスプリンターズSを選択してマイルCSに向かうケースは、2020年に両レースを連勝したグランアレグリアと同じ。近年の最強マイラー候補として名の挙がる女傑と比較するのはまだ早いが、2頭にはちょっとした共通点がある。

 それは、いずれもトップマイラーながら中距離にも対応できるだけの実力の持ち主ということだ。かつてグランアレグリアを管理していた藤沢和雄・元調教師も当時、スプリンターズSを快勝しながら、「短距離向きではない」と評していたことが、翌年の大阪杯(G1)や天皇賞・秋(G1)といった2000mのレースに挑戦した理由の一つともなった。

 そういう意味ではシュネルマイスターのスプリント参戦は、競馬ファンにとって少々“残念なお知らせ”となった感も否めない。大阪杯に使われるまでマイル戦までしか距離経験のなかったグランアレグリアに対し、シュネルマイスターは既に1800mの毎日王冠(G2)を快勝している実績がある。

C.ルメール騎手

 当時、C.ルメール騎手がレース後に「仮に距離が2000mでもこなせそう」と振り返っていたことを考えれば、距離についても400mの短縮よりは200mの延長の方が現実的という見方も成立するだろう。何しろ同年の3月には弥生賞ディープインパクト記念(G2)で2000mを走ってタイトルホルダーの2着に入っているのだから尚更だ。

 ただでさえ、今年の天皇賞・秋(G1)は現役最強クラスのメンバーが集まるともいわれている。よもやの惨敗を続けた今春の巻き返しを期すエフフォーリアも絶対に負けられない舞台として挑んでくる。

 そしてダービー馬ドウデュースの姿はなくとも、皐月賞馬ジオグリフをはじめ、皐月賞とダービーで共に2着のイクイノックスなど、春のクラシックを賑わせた3歳牡馬が出走を表明したばかり。人気を集めたダノンベルーガにしても、距離の不安がある菊花賞(G1)ではなく共同通信杯(G3)を圧勝した中距離戦で左回りの東京を選択する可能性が高い。

 仮にシュネルマイスターが参戦すれば、強豪が激突するレースを期待するファンとしては、非常に楽しみなレースとなっただろう。

 とはいえ、それが実現しなかった背景にはグランアレグリアの時と同じく、ルメール騎手の存在が関係ないとはいえないかもしれない。

「グランアレグリアは、アーモンドアイと直接対決した安田記念で2馬身半という決定的な差をつけて圧勝していましたから、天皇賞・秋で2頭の再戦を望む声も少なくありませんでした。

ただ、現実には金星を挙げたはずの池添謙一騎手から主戦のルメール騎手に手綱が戻ったグランアレグリアがスプリンターズSを優勝。アーモンドアイもルメール騎手でしっかりと天皇賞・秋をモノにして次走のジャパンC(G1)で芝G1・9勝の偉業へと繋げました。

ネットの掲示板やSNSなどでは、一部のファンからは“使い分け”や“ルメール忖度”という声もありましたが、陣営からすれば勝算の高いレースに使うのもごく普通の戦略。実際、両馬とも勝利した訳ですから結果的にも大成功だったのではないでしょうか」(競馬記者)

 記者が指摘した通り、どちらも一口クラブに所属している馬であり、オーナーサイドとしても賞金を還元するには最適な選択をしたといえる。この辺りは憶測の域を出ないとはいえ、必ずしもファンが望んだ対決が実現しない“大人の事情”に近いか。

 客観的に見てみても、今春の高松宮記念(G1)を8番人気の伏兵ナランフレグが勝利したように、現在のスプリント路線は抜けた馬のいない手薄な状況だ。それだけに激戦区の天皇賞・秋にあえて使うよりも、相手関係は随分と楽になる。

 ルメール騎手がすでに出走を表明している天皇賞・秋でイクイノックスとコンビを組むなら、シュネルマイスターが出走した場合、鞍上問題にも発展しかねない。

 そして両馬もまた一口クラブの馬なら、今回のスプリンターズSからマイルCSというローテーションが選ばれたのも、ある意味では当然の流れだったのだろう。

 一応、スプリンターズSと同日に開催される凱旋門賞(仏G1)に挑戦するステイフーリッシュについては、社台ファームの吉田照哉代表から「凱旋門賞はルメール騎手に頼んでいます」という話も出たため、場合によってはシュネルマイスターに他の騎手が騎乗する可能性にも触れておく。

 ただアーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトという世代や性別の異なる3冠馬3頭が一堂に会した2年前のジャパンCが、空前の盛り上がりを見せたのは、ファンの誰もが望んだ対決が実現したからに他ならない。

 もし今年の天皇賞・秋にシュネルマイスターがいてくれたら……と期待してしまったのも筆者のわがままだろうか。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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