武豊、ルメール、川田、福永ら「神7」は用なし!? 3年連続リーディングへ「最強調教師」の本領発揮

撮影:Ruriko.I

「信は力なり――」

 ドラマ『スクールウォーズ』のモデルになった、元伏見工業高等学校ラグビー部総監督の山口良治さんの言葉としても知られる名言だが、この言葉を『東スポ競馬』のコラムで「自分の最も大事な部分」と語っているのが、JRAの矢作芳人調教師だ。実際にサンスポで長く、同タイトルのコラムを執筆している。

 この16日、5戦3勝と好調の波に乗ってきた矢作厩舎。勝率1割台なら一流といわれる調教師としては破格の結果である。これで今年の通算勝利を31とし、トップの池江泰寿厩舎とはわずか3勝差。3年連続の調教師リーディング獲得が、いよいよ現実味を帯びてきた。

 超名門校として知られる開成高校を卒業したものの、幾度となく調教師試験に落ちながらも今の地位を築いた苦労人。昨年、米ブリーダーズCで2勝(ディスタフ、フィリー&メアターフ)を挙げるなど、今や「世界の矢作」として知られる日本を代表するホースマンにまで上り詰めた。

坂井瑠星騎手

 そんな矢作調教師だが、特筆すべきは毎年リーディングを争いながらも坂井瑠星騎手、古川奈穂騎手といった2人の弟子を育てている点だ。実際に先述したこの日の3勝も、すべて厩舎に所属する2人が挙げたものである。

 横山武史騎手や和生騎手、岩田望来騎手などの2世ジョッキーを中心に、最近になってようやくリーディング上位陣にフレッシュな顔ぶれが名を連ねるようになったジョッキー界。だが、一時は5年連続リーディングのC.ルメール騎手を筆頭に川田将雅騎手、福永祐一騎手、武豊騎手、戸崎圭太騎手などがAKB48の総選挙にちなんで「神7」と呼ばれるなど、トップ層は長く固定されたメンバーだった。

 逆に言えば、それだけ新人騎手が独り立ちするのは難しいということだ。また馬主から数千万、数億円という馬を託される各厩舎にも、新人を育てているような余裕がなかったともいえる。

2人の弟子を育てながらのリーディング獲得

 

 そんな中、矢作調教師は極めて異質の存在といえるだろう。いや、積極的に新人を起用しながらも成績を落とさないのだから「常識の上を行く」と称すべきなのかもしれない。

 実際に坂井騎手が矢作厩舎の所属騎手としてデビューした2016年以来、1年の大半を豪州で武者修行した2018年を除けば、今年も含めて6年連続で最多の騎乗機会が与えられている。昨年からは古川奈騎手が“2番弟子”として加わったが、やはり坂井騎手に次ぐ非常に多くの騎乗機会を与えられている。

 その一方で、矢作厩舎がルメール騎手や川田騎手ら「神7」を起用する機会はほとんどない。

 普通、こんな騎手起用をすれば、厩舎の成績が付いてくるわけがない。厩舎の成績が落ちれば当然、厩務員らそこで働くスタッフの収入も減る。つまり、これだけを見れば、まさに調教師の「エゴ」と言わざるを得ないのだ。

 しかし、これで現在2年連続のリーディングを獲得しているのが矢作芳人である。

 例えば、今年(16日現在)は厩舎全体で291回の出走の内、坂井騎手が91回で古川奈騎手が70回と、この2人が断トツの騎乗機会を得ている。

 一方、武豊騎手が4回、川田騎手が3回、福永騎手と戸崎騎手が2回、ルメール騎手に至っては騎乗機会なしとトップジョッキーへの依頼はほぼ皆無と言っても過言ではない状況である。

「僕は人を信用する、信用したいというところから入る人間」

『東スポ競馬』のコラムでそう語っている矢作調教師は、まさに「信は力なり」を体現している人物と言えるだろう。現在、坂井騎手がリーディング7位に名を連ね、古川奈騎手も早くも昨年の7勝を上回っている。この成績は、本人たちの努力も然ることながらも、同時に師匠の実績ともいえるはずだ。

 自分の信念を貫くことは、実はそう難しくはない。しかし、そうしながら結果も残して周囲を納得させるのは、まさに一握りの人間にしかできない偉業だ。

(文=銀シャリ松岡)

<著者プロフィール>
 天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。

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