ディープインパクト、キングカメハメハを失った生産界。後継争いで目を引く米国の大物の宣戦布告

 大種牡馬として一時代を築いたディープインパクト、キングカメハメハという2大巨星が相次いでこの世を去った2019年の夏からはや3年。時代を担う後継種牡馬の座を巡る熾烈な争いがまだまだ続いている。

 現状で最も成功しているといえるのは、2019年に初年度産駒がデビューしたエピファネイアだろう。史上初となる無敗で牝馬三冠の快挙を成し遂げたデアリングタクトを出すと、翌年にはエフフォーリアという大物も登場。昨年の2歳女王に輝いたサークルオブライフも春の牝馬クラシックで注目を集めた。

 産駒が古馬になってG1を勝てていないこともあり、成長力を懸念されている反面、完成度の高さで他馬をリード。比較的早い時期から結果を残しているのは生産者にとっても魅力だろう。同期のキズナはソングラインやアカイイトが古馬になって待望のG1制覇。種牡馬としても現役時代さながらのライバルとなっている。

 2020年デビュー組のドゥラメンテ、モーリスは懸けられた期待の割に伸び悩んでいたものの、前者は古馬になって素質が開花したタイトルホルダー、今春の牝馬クラシックで二冠を制したスターズオンアースが登場。後者もピクシーナイトが3歳秋にスプリンターズS(G1)を制し、大物候補と期待されるジャックドールも出した。

 2021年デビュー組のドレフォンは皐月賞馬ジオグリフ、キタサンブラックは牡馬の春クラシックでともに2着に好走したイクイノックスなどがいる。

 そして、今年の新種牡馬の2歳世代による戦いも6月からスタート。サトノダイヤモンド産駒となるダイヤモンドハンズが開幕戦を勝利してから1か月半が経過したが、先輩種牡馬たちに比べると苦戦を強いられている。

 主力視されたサトノクラウン産駒は、クラックオブドーンが何とかデビュー戦を勝利したものの、全体では8戦1勝。この2倍にあたる16戦に出走したリアルスティール産駒はいまだ勝利すらない。ワタシダケドナニカがダート1000mの未勝利戦で1勝を挙げたマインドユアビスケッツもダートの短距離専門といった印象だ。

 大物候補が登場した近年の顔触れからすると、スケール感で少々見劣ることは否めない今年の面々だが、目を引いたのは米国産馬デクラレーションオブウォーの存在である。「宣戦布告」を意味する馬名もタイミング的に合っている。

 産駒成績も【2.3.0.6/11】で勝率18.2%、連対率と複勝率はともに45.5%のハイアベレージをマーク。現役時代にはイギリスの芝中距離G1であるインターナショナルS、マイルG1のクイーンアンSを制覇しただけでなく、アメリカのブリーダーズCクラシック(G1)でも勝ち馬からハナ、アタマ差の3着に好走。ダートでもG1級のポテンシャルを証明した。

「日本での正式な産駒のデビューは今年ですが、デュードヴァンやジャスパージャックらが既に走っています。海外ではありますが、既にG1を勝利した産駒を多数出しているように種牡馬としての実績はむしろ抜けているといっていいでしょう。

父の特徴を引き継ぐように芝ダートどちらも好走していますから、幅広い条件で活躍が期待できそうですよ。短距離をこなせるスピードもあるだけに、日本の競馬にも適性があると思います」(競馬記者)

 ダークホース的な注目を集めるデクラレーションオブウォーだが、血統的にも種牡馬として大きな成功を収めた父ウォーフロントは「ダンジグ晩年の傑作」とまで呼ばれるようになった名馬だ。

 血統評論家の栗山求氏によると「基本的には繁殖牝馬の特長を生かすタイプ」で、芝血統の割合が高い日本の場合、「芝向きのマイラーから中距離タイプが多く出そう」とのこと。サンプル数も少なく今後の可能性は未知数ではあるが、約2回に1回は馬券に絡んでいる安定感も魅力。今後の2歳戦で覚えておいて損はない種牡馬といえるだろう。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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