JRA【アイビスSD(G3)展望】今村聖奈VS藤田菜七子「夢の競演」が実現!
31日、新潟競馬場では国内で唯一、コーナーを一度も回らない直線だけの重賞・アイビスサマーダッシュ(G3)が行われる。最も早い1分足らずで決着がつく“千直”重賞を早速展望していこう。
2019年から4年連続で出走を果たすのは、千直王ライオンボス(牡7歳、美浦・和田正一郎厩舎)だ。
初挑戦の19年は、千直3連勝を懸けて臨み、逃げ切って戴冠。それまでダートを主戦場にしていたライオンボスが“千直スペシャリスト”を襲名した瞬間だった。
その後も直線コースで好走を続け、連覇を懸けて臨んだ20年はジョーカナチャンにハナを奪われるよもやの展開。最後は差を詰めたが、アタマ差及ばずの2着に敗れた。
3度目挑戦の昨年は再び逃げの手を打ったが、オールアットワンスに早めに交わされると、3/4馬身差でまたも2着に敗れた。それでも3年連続で連対を果たしており、現役屈指の“千直巧者”なのは誰もが認めるところだろう。
陣営は今年最大の目標をこのレースに設定していたはず。ところが過去3年で前哨戦として使っていた韋駄天S(OP)に今年は出走しなかった。これは、5月に胸部打撲で一頓挫あったためで、例年より1か月以上間隔が空いたのは不安材料といえるかもしれない。
一頓挫に加え、7歳という年齢もあり、かつてのスピードを発揮できるのか。その走りに注目だ。
そして、今年のアイビスSDで最も注目を浴びるのが女性騎手2人による競演である。7年目の藤田菜七子騎手とルーキー今村聖奈騎手が重賞では初めての直接対決を迎える。
スティクス(牝4歳、栗東・武幸四郎厩舎)にテン乗り予定の藤田騎手は、98戦10勝と千直は得意コースの一つ。騎乗経験も多く、コースの特徴はつかんでいるはずだ。先輩ジョッキーとして負けられない。
一方、オヌシナニモノ(牡5歳、栗東・高橋義忠厩舎)に騎乗予定の今村騎手は、5月に1度騎乗しただけ。その時は6番人気の馬を3着に持ってきたが、今回はどうか。こちらも同じくテン乗りとなるが、実は藤田騎手はオヌシナニモノに騎乗経験がある。レースではライバルとなるが、何かしらのアドバイスをもらえるか……。
昨年は初の千直にもかかわらず、1番人気に推されたオールアットワンス(牝4歳、美浦・中舘英二厩舎)。51kgの軽量も生かして、見事ライオンボスを競り落とした。
その後は1ハロン距離を延ばして臨んだ京阪杯(G3)で8着、さらに1ハロン延ばした京都牝馬S(G3)は10着と振るわず。2度目の千直となった前走・韋駄天Sは2枠4番という内目の枠順も響いたか、6着に敗れ、3戦連続で掲示板を外している。
凡走続きのオールアットワンスだが、陣営からは「夏場で体調が上向いている」とのコメントが出ている。戦歴を見ても、確かに暑い時期は別馬のような好成績。新潟の暑さを味方に、08-09年カノヤザクラ、15-16年ベルカントに次ぐ3頭目の千直重賞連覇を目指す。
このコースで2戦2勝のマリアズハート(牝6歳、美浦・菊沢隆徳厩舎)も主役候補の1頭だ。
2勝はどちらもオープンクラスで挙げていて、昨年のルミエールオータムダッシュ(L)は、6番人気でタマモメイトウ以下をなで切った。その後は1200mやダートも使われたが、韋駄天Sで2度目の千直に勝利している。
千直オープン2勝という実績は誇るに値するが、2戦とも有利な8枠だったことも事実。もし内目の枠に入ったときにどういう競馬を見せるのか。両レースで鞍上を務めた菊沢一樹騎手とコンビ3連勝を懸けて臨む。
ヴェントヴォーチェ(牡5歳、栗東・牧浦充徳厩舎)は、2年前の春に千直を1度経験。その時は、14頭立てのちょうど真ん中、7番枠からはやぶさ賞(1勝クラス)を制覇している。
その後はローカルを中心に芝1200mを使われ、オープン入り3戦目となった2走前の春雷S(L)では、重賞ウイナーのタイセイビジョンに3馬身差で完勝。2番人気に支持された前走の函館SS(G3)は7着に敗れたが、2度目の千直で巻き返しを期す。
骨折休養明けのアヌラーダプラ(牝5歳、美浦・萩原清厩舎)は、船橋S(3勝クラス)、UHB賞(OP)を2連勝中。鞍上は短期免許を取得し初来日する、香港の名手C.ホー騎手を予定している。
千直で2勝しているジュニパーベリー(牝5歳、美浦・手塚貴久厩舎)も大駆けの可能性がある。昨年のルミエールADで同斤量だったマリアズハートと1馬身差の3着なら、1kg軽くなる今回は互角以上の戦いができるだろう。
女性騎手2人の参戦で例年以上に注目を浴びる今年のアイビスSD。発走は31日、15時45分を予定している。