今村聖奈「新馬勝ち」の意味。横山武史は8頭目がエフフォーリア
7日、札幌競馬場で行われた5Rの新馬戦は2→1→3番人気とガチガチの決着だったが一方、新潟競馬場で行われた5Rの新馬戦は12番人気のムーンスカイ(牡2歳、栗東・牧田和弥厩舎)が勝利するなど大波乱の結果に終わった。
12→11→6番人気で決着し、三連単36万1110円という波乱のレースの「主役」は、好調ぶりが注目される今村聖奈騎手だ。
「調教に乗っている黒岩(悠)ジョッキーから『あまり切れる脚はない』と聞いていたので、スタートを出たら減量を活かして、前々で粘る競馬をしようと」
まさに作戦勝ちの一戦だった。16頭立て芝1600mのレース。ムーンスカイのスタートはまずまずといった印象だったが、今村騎手が促して積極的に好位を取りに行く競馬に。3番手で折り合うと、最後の直線に向いたところで一気に先頭へ躍り出た。
舞台は新潟外回りコースの長い直線。早々に先頭に立った12番人気の伏兵に後続もしっかりとついて行ったが、ライバルより4kg軽い斤量50kgのムーンスカイは簡単には止まらない。あれよあれよという間に2着エスペランサフラグが半馬身差まで詰め寄ったところがゴールだった。
「いやあ、お見事でした。正直、追い切りであまりいい動きには見えなかったので軽視していたのですが、今村騎手としては好感触だったそうです。ルーキーの女性騎手ということで4kgのアドバンテージがあることはわかっているのですが、それにしてもいい粘り腰でした。積極的な競馬を試みたジョッキーの好判断でしたね、作戦勝ちだったと思います」(競馬記者)
若手騎手にとって新馬勝ちは大きな1勝
ちなみにこの勝利が今村騎手にとって初の新馬勝ちになったが、記者曰く「非常に大きな勝利」だという。
「若手騎手にとって最も垣根が高いのは重賞ですが、その次に勝つのが大変なのが新馬戦。
この時期は毎週行われていますが、今年のルーキー10人で新馬戦を勝った経験があるのは、今回の今村騎手と角田大河騎手という勝ち星ワンツーのジョッキーだけです。
各馬にとってデビュー戦ということで馬主さんの期待も高いですし、初めてレースを迎える新馬だけに経験に乏しい若手騎手は敬遠されがち。若手騎手にとって新馬戦は、重賞などと同じく騎乗するだけでも大変なレースです」(別の記者)
ちなみに女性騎手が新馬戦を勝ったのも、今回の今村騎手が今年初。女性ジョッキーのパイオニア的な存在の藤田菜七子騎手でさえ、前回2歳新馬を勝利したのは2018年まで遡る。
「昨年、永島まなみ騎手が新馬戦を2勝していますが、いずれもその後に継続騎乗に繋げています。女性騎手に限らず、若手騎手にとって新馬勝ちは大きな1勝。お手馬として継続騎乗を頼まれる機会も少なくないですし、例えばエフフォーリアと横山武史騎手のようにコンビでブレイクして、一気に全国の競馬ファンへ名前を売ることもあります」(同)
現在リーディング2位と、今や若手の代表格としてトップジョッキーに上り詰めた横山武騎手。大ブレイクのきっかけとなったのが、一昨年の夏にあったエフフォーリアとの出会いだった。もし、本馬が他のジョッキーでデビュー勝ちしていれば、横山武騎手の騎手人生もまったく違ったものになっていたはずだ。
「真面目な性格で、よく頑張ってくれました」
レース後、白星発進となったムーンスカイをそう称えた今村騎手。ちなみに横山武騎手は新馬勝ち4頭目のウインマリリンで重賞初制覇を飾り、8頭目のエフフォーリアでG1初制覇にたどり着いている。
これでオープン馬となったムーンスカイは果たして、今村騎手に何をもたらせてくれるのか。まずは次のレースを同じコンビで迎えたい。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。